故郷、熊本の支援を模索しながら感じたこと[小山薫堂の妄想浪費 Vol.12]

ガウディのサグラダ・ファミリアばりに長い時間をかけて修復されていく、復興のシンボル「熊本城」(illustration by Yusuke Saito)


ということで今回は「妄想浪費」とは少しずれてしまうかもしれないけれど、支援のために1カ月間動いてみて感じたことや復興のアイデアをいくつか記したいと思う。

支援策第2弾は、Yahoo!ネット募金の中に開設した「くまモン募金箱」である。集まった支援金はその使用用途を熊本県庁と相談し、他県・NPO団体への振り分けも含めて、逐一公開していく予定だ。

この募金活動を行って初めてわかったのだが、たとえば僕が5,000万円の募金を集めて、自身で使い道を決めて使うと、それは5,000万円の収入と見なされて税金がかかる。もちろん、税金のかからないNPO団体などに回すこともできるけれど、送り先の選定が難しく、かつ時間もかかる。このような緊急事態の場合は、国が税制の特別優遇措置を早急に立案すべきではないかと感じた。

その点、早稲田大学の准教授・西條剛央(たけお)先生が立ち上げたスマートサプライという支援システムは素晴らしい。募金を行いたい気持ちはあれど、「本当に有効活用されるのだろうか」と心配されるような方たちの気持ちに応え、支援を「見える化」し、必要な人に必要な支援を必要な分だけ届けることのできる仕組みがスマートサプライだ。

今回の熊本地震でも、ボランティアの人たちが避難所を回って、本当に必要な物資が何かを見極めて報告し、それを外部の人が購入するので、支援格差が是正されている。国に東日本大震災からの復興を目的として設置された「復興庁」があるのなら、2021年に廃止などと言わずに、このようなシステムを生かした機関を研究して管理・運営してほしい。

物資支援に関しては、国内都道府県の間で「災害姉妹都市」という仕組みをつくったらどうだろうか。同じような人口、同じような職業バランスの2都市が日ごろから関係を結んでおいて、一方が被災したときにもう一方がすぐに救援物資を送るのだ。

それと、これからは学校で「災害教育」も行うべきなんじゃないかと思う。災害時にどのような行動をすべきかはもちろん、被災地にどういう支援をしたらいいかという側面まで子どものうちから学ぶ。

いまは「支援」というと、募金と現地ボランティアが主流だが、これからは「人々の想いのこもった善意をどうやって最大化させるか」ということも考えなければいけないと僕は思う(スマートサプライはまさに善意の最大化が上手にシステム化された例だ)。災害の多いこの国で、これからも覚悟を持って暮らしつづけるためにも。
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イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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