ヤフー×白馬村の成功にみる「一企業肩入れモデル」の実力

(illustration by Kenji Oguro)


ヤフーと白馬村が繋がったきっかけは、宮坂さん個人のルーツが白馬村にあったことにある。白馬村は、宮坂さんの父親の出身地であり、山口県出身の宮坂さんにとって第二の故郷であり、スポーツでリフレッシュするための場所でもある。

とあるインタビューで宮坂さんは「社員には、会社の器を利用して、仕事を通じた自己実現をしてほしい」と答えている。これを一番実践しているのは、おそらく本人だ。宮坂さんがやっていることは、立場に関係なく、個人が「自分の特別な思いをきっかけに行動すること」の大切さを教えてくれる。

宮坂さんの頭の中は、いつもアイデアでいっぱいだ。社内を歩きながら、あたためているアイデアを社員に投げかける。「これさ、絶対いけると思うんだよね〜!」。筆者はヤフーで働いたことはないが、いろんな方からの話を聞くと、たぶん、こんな感じだ。

だいたいのアイデアは実行には移されず、結局実現しないらしい。しかし、ヤフーのミッションと世の中の流れが、宮坂さんの思いのベクトルと一致したとき、ユニークなプロジェクトが生まれる。

例えば、3年がかりで13年に実現させた「ツール・ド・東北 2013 in 宮城・三陸」。三陸の雄大な自然の中を自転車で走るレースだ。東日本大震災直後に、被災地の人から「とにかく人に来てほしい」という言葉を聞いたのがヒントになった。

15年には「未来に残す、戦争の記憶〜100年後に伝える、あなたの思い〜」というプロジェクトを立ち上げた。これは、戦争に関する記憶や思いを未来に残すための特集だ。宮坂さんの祖父が戦争で亡くなっているという個人的な思いや、戦後70年が経過し、戦争を経験した世代から生の声を聞ける時間が残り少ないことへの危機感から、宮坂さん自らがリーダーを務めた。
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後藤陽一=文 尾黒ケンジ=イラストレーション

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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