ヤフー×白馬村の成功にみる「一企業肩入れモデル」の実力

(illustration by Kenji Oguro)

ウィンタースポーツの聖地、白馬村。ここが近年、夏のアウトドアスポーツでも注目されている。背景には、ヤフーの支援があった。「肩入れ」とは、「ひいきをすること。力を添えること」。1企業が1つの地域に“肩入れ”し、片っ端から課題を解決していくことで、今までになかった地域活性化が見えてくる。

ウィンタースポーツで知られる長野県北安曇郡白馬村。ここが長年にわたって抱えてきた課題は、グリーンシーズン(夏)の閑散期における集客施策だった。その解決策として2011年に始まった「白馬国際トレイルラン」は今、全国でも屈指のトレイルランニングイベントになっている。15年の第5回大会では出場者約2,000人の枠に申し込みが殺到し、数時間でいっぱいになるほど。冬のスキーに続く新たな観光の目玉として、一年を通した白馬の雇用促進策として、村の活性化に繋がることが期待されるキラーコンテンツに育っている。

このイベントの立ち上げと運営には、Yahoo!JAPAN(以下、ヤフー)の宮坂学社長以下、大勢のヤフー社員がボランティアで参加してきた。USTREAMでの中継や、エイドステーションの設営、後夜祭の運営も無償で手伝った。いや、手伝ったというよりもむしろ「主体者」として、進んで色々なことを企画して実行した。

ぐっと肩を入れて、社員も、そうでない人も巻き込む。宮坂さんは、こうして地方を元気にしてきた。白馬の自然が大好きな宮坂さんは今、100マイル(約160km)のトレイルランニング、青木湖を使ったトライアスロン大会、世界の一流スノーボーダーを呼んで白馬の雄大な山を滑らせるイベントのアイデアを、地元の若いリーダーたちとともに構想している。

15年9月、ヤフーは白馬村と連携協定を結んだ。白馬高校へのICT教育の支援などを行い、観光や教育分野の活性化を目指すそうだ。この事例を、最近よく聞く「地方創生」や「官民連携」という言葉で片付けるのは簡単だ。しかし、ヤフーのような社員数千人規模の上場企業が、創業の地でもない人口1万人弱の地方自治体と、こうして手を繋ぐ事例は全国を見渡してもなかなか見当たらない。
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後藤陽一=文 尾黒ケンジ=イラストレーション

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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