教育/精神活動
クロスワードや数独が認知症予防になり得るという話をよく聞くが、これらの活動が実際に発症リスクにどのような影響を及ぼすかについては、それを裏付ける証拠もあれば、そうではない証拠もある。最近、総合医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に発表されたある研究が注目を集めた。少なくとも高校までの教育を受けている人は、そうでない人に比べて発症率が減っているという報告で、教育になんらかの予防効果がある可能性が示唆されている。
また別の研究では、アルツハイマー病の遺伝的リスクがより高い人のうち、中年期に活発な精神活動を維持した人は、そうしなかった人に比べて脳内のアミロイド班の蓄積量が少なかったことが判明した。遺伝的素因のない人については、あまり明確な関連は見られなかった。
前出のクノップマンは、精神的な刺激は年齢を重ねてから始めるのではなく、生涯を通しての取り組みがベストだと付け加える。「おそらくこれらの活動が豊かな脳の機能的結合の発達を刺激し、それによって脳の予備力を増やすことで認知症を予防する可能性がある」
言い換えれば、より多くの教育を受けた人や、より豊かな知的生活をしている人は、アルツハイマー病を発症した際に使うことのできる予備力がより多くあり、より高い抵抗力がある可能性がある。「認知活動が脳内の原因物質の生成や蓄積を止める訳ではない。生涯を通して認知活動との関わりがより少ない人に比べて、多い人の脳の方が、脳の病的状態がもたらす影響に抵抗する能力が高いということだ」
心の健康
理由は判明していないが、一部の研究では、鬱や慢性的ストレスのような心の健康とアルツハイマー病の関連が指摘されている。どちらが先かははっきりしておらず、鬱やストレスはアルツハイマーの初期症状なのかもしれない。あるいは、どちらの症状も認知症リスクを高めるのかもしれない。または精神活動が人をより“強く”するのと同じように、心の健康を損なうと人はより“弱く”なるのかもしれない。いずれにせよ、心の健康に留意することは常に重要だ。