「制作中はほとんど毎日のように、編集者のサム・ライス=エドワーズと『なんてこった。こいつはまさに今、米国で起こっていることじゃないか』と言い合っていた。自分の目を疑ったよ」。ジョン・レノンとオノ・ヨーコの1970年代初期ニューヨークでの日々を描いた新作ドキュメンタリー映画『ONE TO ONE: JOHN & YOKO』について、ケヴィン・マクドナルド監督はこう振り返る。
「黒人女性が初めて米大統領選に出馬し、右派ポピュリストの大統領候補がカメラの前で撃たれた。(1969年に大統領に就任した)リチャード・ニクソンも非常に狡猾に振る舞い、型破りな手法でホワイトハウスの権力を利用した。ベトナム戦争をはじめとした多くの側面が、今日のガザでの戦争や米大学における分断と類似している。70年代初頭の米国で起こったことが奇妙に歪んだ形で繰り返されていて、私たちはその中で生きているような気がする」
ドキュメンタリー映画『ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実』でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、映画『ラストキング・オブ・スコットランド』ではアカデミー主演男優賞をもたらしたマクドナルド監督は、レノン一家の未公開映像と音声、そしてビートルズ脱退後のレノンが残した唯一のノーカットライブ映像であるマディソン・スクエア・ガーデンでの慈善公演「ワン・トゥ・ワン」のシーンを核として今回の映画を制作した。
「今日との類似性については、気持ちが行ったり来たりしている。米国は過去にこうした事態を乗り越えてきたのだから、今起きていることは世界の終わりではない、そう気づかせてくれる点で安心だと感じたり、逆に『人は何も学ばないのか、同じ過ちを繰り返すのか』と思ったり」と監督は述懐する。「ともかく、驚くべきことだ。今日に関する映画を作ろうとしたわけではないが、今日のことを映画にしたみたいに感じている」
画期的な慈善公演を核に据えた理由
米国時間2025年4月11日から全米のIMAX劇場で先行上映され、その後一般公開される『ONE TO ONE: JOHN & YOKO』は、ジョンとヨーコの唯一のノーカットライブ映像の未公開素材や新たに復元された映像をもとに「没入型の映画体験」を提供する。コンサートの映像は2人の息子ショーン・オノ・レノンが新たにリミックスとプロデュースを行った。