男のロマンを追い求めて
エネルギービジネスというのは男のロマンなのかもしれない。
僕の祖父の祖父、つまり高祖父は小山秀之進といって、大工の棟梁として名を挙げ、ついにはエネルギービジネスに手を出した人物であった。
そもそも小山家は天草と長崎を中心に、貿易や建築や金融などに携わっていた。秀之進は、いまでいうならゼネコンの社長のような存在で、長崎のオランダ坂の工事のほか、貿易商のトーマス・グラバーが住んでいた日本最古の木造洋風建築「旧グラバー住宅」や、国内現存最古の教会で国宝に指定された「大浦天主堂」も建築している。
明治維新後、秀之進は建築で儲けたお金を、グラバーと佐賀藩が共同経営する高島炭鉱に出資した。そう、エネルギービジネスに参入するわけだ。しかしグラバーの破産や労働者の度重なる暴動で、思うように利益が出なかった。1874年に高島炭鉱が国営化されると、近くの端は 島しま(軍艦島)炭鉱に活路を見出し、出炭業務を請け負う。ところが不運は続くもので、76年に端島を台風が襲い、労働者がたくさん亡くなられ、それがもとで破産してしまう。
小山家が何百年間で築き上げてきた財産を秀之進はたったの一代で失ってしまった。
結局、高島炭鉱も端島炭鉱も岩崎弥太郎の手に渡り、三菱財閥が築かれていくわけだが、その話はさておき、高祖父の名誉のために付け加えさせていただきたい。
秀之進は87年に国内初の本格的な近代港湾であり熊本県の一大貿易港「三角西港」を完成させた。その後、別事業に手を出して再度没落したけれども、今年7月に世界文化遺産に正式登録された「明治日本の産業革命遺産」の23構成資産のうち、4資産が秀之進の建築・建設したものだった。財産は失ったけれど、人類の宝は残したからいいか……というのが僕の偽らざる本音である。
世論はいつか政府に影響する
このようにエネルギービジネスにはたくさんの人が参入し、数々の失敗を経て、いまがある。振り返ればわずか150年弱の間に、石炭からバイオガスまで多様なエネルギー資源が生まれてもいる。
ところが日本はいまも化石燃料だけで年間20兆円もの巨費を海外に支払っているという。その20兆円を、次世代エネルギー資源となるサツマイモづくりに投資したらよいのではないだろうか。そうすれば日本は農業国としても再生するだろうし、原発の危険性もなくなり、世界にも賞賛される。一石二鳥以上だ。せめて、日本のエネルギー自給率が原子力を入れて19%なら、原子力分の15%だけでもサツマイモでカバーしたらよいのではないか。
もちろん国はいまのところ振り向きもしないだろうから、誰か日本人の資産家が参入したらいい。鈴木先生が研究を続けるだけ、霧島酒造さんが単独でやるだけではもったいない。実際に誰か資産家が大きな身銭を切り、損をしながらでもその発電システムが可能であるということを具現化する。
「これは海外に支払う20 兆円よりもコストは高くなるかもしれないけれど、日本のため、ひいては世界のためになる」と国民が納得すれば応援したくなるはずだし、そういった世論が政府に影響して発電システムが変わっていけば言うことない。その実験費用20億円を、どーんと誰か。2,500億円の国立競技場よりはずっと有意義で未来のためになると思いますが。
そういえば、孫正義さんは東日本大震災以降、10億円あまりの私財を投じて自然エネルギー財団を設立した。
著書『孫正義のエネルギー革命』では、東京から約3,000km離れたモンゴル南部のゴビ砂漠で風力発電を設置し、日本に送るという「アジアスーパーグリッド構想」も打ち出している。もちろん、この壮大な構想にチャレンジするのもいいと思うのだが、エネルギー自給率の解決にはならない。
だから僕は孫さんにサツマイモ発電を勧めたい。
しかもいま気づいたのだが、孫正義というお名前は「ソン(損)をしてでも、世の中に正義を広める」という意味にも取れる。
自給率を解決して第一次産業にも貢献。一挙両得ですが、いかがでしょうか、孫さん。