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起業家に関するすべてについて執筆

igor stevanovic / Bigstock

2014年9月に起業した時、リズ・ヴェッセルとJ.J.フリーゲルマンは社名についてあまり深く考えなかった。

オンラインで学生たちに仕事を紹介する事業を始めた彼らは「thecampusjob.com」というドメインを9ドル99セントで買った。仮につけた名前のつもりだったが、創業した2人も最初の社員たちもビジネスの根幹をなす技術やオペレーションの立ち上げに忙殺され、会社のブランディングは後回しになった。夜を徹してブレストしたにも関わらず、事業がスタートする前に決まったのは「The」をとって「Campus Job」にするということだけだった。(マーク・ザッカーバークもこのアイデアに賛成してくれただろう)。

創業時の名前なんて簡単に変えられると思うかもしれない。だが、ヴェッセルによると「そんなに簡単な話ではない」という。「事業がスタートする前にもっと違う名前にしておけばよかったって心から思ったわ」

起業に際して900万ドルを調達したCampus Jobは、ブランディングをやり直すために名前をWayUpに変えた。彼らは新しい名前を3000人以上の社員や顧客、15万人以上いる学生ユーザーたちに浸透させる必要に迫られている。

一体、何がいけなかったのか? Campus Jobのケースは起業を考えている人たちにとって大いに参考になるだろう。一見すると「Campus Job」というのは分かりやすくていい名前に思える。だがいろいろと問題があるのはすぐに明らかになった。

まずは単数形か複数形かの問題である。「Campus Job」という単数形が本来の名前だったが、学生も投資家たちも「Campus Jobs」と複数形で呼び始めた。いろいろな仕事がサイトで紹介されていたからである。ヴェッセルは訂正するのを数週間であきらめた。幸い「campusjobs.com」のドメインを所有していた会社は、ただでそれを引き渡してくれた。

NBCの番組に出たことでヴェッセルは幸先のいい事業のスタートを切ったが、彼女を紹介するテロップには「College Jobsの24歳のCEO」と書いてあった。campusなのかcollegeなのかという混乱も会社を良く知っているはずの人たちの間にまで広がった。「私と毎日連絡を取っている出資者たちでさえCollege Jobsと呼んだりするんです。いちいち正すのも面倒で」と
ヴェッセルは言う。

もっとひどかったのは、名前が事業の範囲を限定してしまったことだ。夏のインターンシップ紹介事業を立ち上げた時、学生も雇用主もあまり乗り気ではなかった。Campus Jobsという名前のせいで、サイトで紹介されているのは大学内での仕事だけだと思われたからだ。これはヴェッセルが予想していなかったことだった。

これが最後の決め手となって、7カ月を費やして会社のブランド戦略再構築に取り組むこととなった。それはかなり難しい作業だった。「ソーシャルメディアのハンドルネームを変える方法についての情報はたくさんあったけど、顧客やユーザーを大勢抱えた会社が社名を変えるための情報はどこにもなかったの」

6月の資金調達を終えた時点で、ブランド再構築は形を整え始めた。出資者たちはヴェッセルに10万ドルから15万ドルかかるにしてもブランド構築専門のエージェンシーに頼んだほうがいいとアドバイスした。だが彼女が仕事を頼んだエージェンシーは、7月初めに最後の段階で手を引いた。

ヴェッセルは打ちのめされた。8月半ばには新学期が始まる(学生たちがキャンパスに戻って仕事を探し始める大事な時期だ)が、その前にブランド再構築を終えられないのではないかと心配になったのだ。だが、コーネル大学から来たふたりのインターンがこの仕事を引き受けてくれた。数時間のブレストだけで彼らは新たな名前の候補をホワイトボードにずらりと並べた。

絞り込まれた候補の全てが使用可能だったわけではない。あるドメインの所有者などは1000万ドル以上も要求してきた。最終的にヴェッセルはWayUpを選択した。Wayup.com が数千ドルで取得可能だったことも多少は影響している。ニューヨーク大学のデザイン科の学生に頼んで新しいロゴを作ってもらったのでそれも安くあがった。見た目も響きもあまり画期的な社名とはいえないが、少なくとも以前の名前がもたらす混乱は回避でき、将来、方向性が変わってもそれに対応しうるものにはなっている。

ブランド再構築に当たってやらなくてはならないことはいろいろあった。法的なことや商標、SNSでのブランディングなど、やらねばならないことが山ほどある。大学やユーザーらにも周知させる必要があった。ウェブサイトに掲載された情報やCrunchbaseやLinkedInのアップデート、会社のメールアドレスを変えることなどなど。

短期間で全てをやり遂げるのは難しい。事業内容は全く変わっていないとしてもだ。だがヴェッセルは、一刻も早く傷口をふさぐことを望んでいた。
「名前を変えることを引き延ばしていると、毎日何千人というユーザーたちが古い名前のほうに登録しその社名を覚えてしまうからです」

こうした経験をもとにヴェッセルは起業を考えている人たちにアドバイスする。自らを縛るようなことになる社名を、たいした考えもなしにつけないこと。1年後、5年後、10年後までその名前を変えずにいけるかどうか、後で後悔しないようにちゃんと考えたほうがいいと。

もちろん「The」を外すのは絶対に忘れないでおきたい。

編集=速水由美

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