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ビジネス

2025.04.24 08:00

トランプ関税で「一人勝ち」となるか? 米国で唯一稼働するレアアース鉱山

米MPマテリアルズが所有するマウンテンパス鉱山。2022年2月4日撮影(Tmy350, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

米MPマテリアルズが所有するマウンテンパス鉱山。2022年2月4日撮影(Tmy350, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

中国が米トランプ政権の追加関税に対する報復として、自動車、電子機器、ロボット、風力タービンなどの電気モーターに使われる磁石の製造に不可欠なレアアース(希土類)鉱物の輸出に制限を課して以来、米MPマテリアルズ創業者で最高経営責任者(CEO)のジェームズ・リティンスキーの電話は鳴りっぱなしだ。新たな調達先を探し求める企業からの問い合わせがひっきりなしにかかってくるのだ。

「切迫感に満ちている。こんなのは初めてだ」とリティンスキーはフォーブスに語った。「なかなか凄まじい状況だ。わくわくするし──ちょっとひるんでもいる」

リティンスキーは、カリフォルニア州モハベ砂漠にある米国で唯一操業中のレアアース鉱山マウンテンパスを経営している。ここでは、防衛、自動車、エレクトロニクス産業で効率的なモーターの製造に必要とされるネオジムやプラセオジムなどのレアアースを産出している。

MPマテリアルズはエンジニア、技術者、鉱員をはじめ800人余の従業員を擁し、レアアースの採鉱から製錬、加工までを一手に担う。電気自動車(EV)のモーター用磁石合金は主力製品の一つだ。今年からはテキサス州の新工場で高性能磁石の製造にも乗り出し、現在中国が独占する市場に切り込みをかける。

レアアース金属の90%は中国で加工されている。特にレアアース磁石は95%近くが中国で製造され、その強度と磁気特性の保持力で高い評価を得ている。米国は年間7000トンのレアアース磁石を輸入しているが、そのほぼすべてが中国産だ。これは、レアアース磁石に依存した製品を扱う米国企業のサプライチェーンにおける明らかな脆弱性である。

ドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた関税戦争が激化するなか、中国は今月4日にレアアースのうち中・重希土類に分類される品目の輸出規制を発表。レアアース磁石の対米輸出を停止した。

ある米自動車メーカーの取締役は匿名を条件に、こう語る。「レアアース磁石を使ったモーターを利用する産業のほぼ全般に言える問題点は、中国がレアアース鉱物に対して非常に大きな戦略的柔軟性を持っていることだ」

「中国の輸出規制はとんでもない大問題だ。もはやモーターは作れなくなる。回転する磁石が入ったありとあらゆるものが。ゲームオーバーだ」

こうして急遽、MPマテリアルズが関税や貿易規制の影響を受けないレアアース供給元を必要とする企業にとって「唯一無二の選択肢」に躍り出たと、米証券会社ベアードのアナリスト、ベン・カロは今月のリサーチノートで述べている。

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中国がレアアース輸出規制を強化 過去の事例から予測する今後の動き

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翻訳・編集=荻原藤緒

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