【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

経済

2025.04.21 11:30

中国がレアアース輸出規制を強化 過去の事例から予測する今後の動き

中国・内モンゴル自治区白雲蝦坡(バヤンオボー)に位置するレアアース鉱山(Getty Images)

中国・内モンゴル自治区白雲蝦坡(バヤンオボー)に位置するレアアース鉱山(Getty Images)

中国は今月初め、ハイテク製品や軍事技術に使われる重要鉱物であるレアアース(希土類)の輸出規制を強化すると発表した。これを受け、オーストラリアのレアアース最大手ライナスの株価は17%、米MPマテリアルズの株価も20%上昇するなど、中国以外に拠点を置くレアアース採掘企業の株価が軒並み上昇した。

こうした株価の上昇は歓迎すべきものだが、中国政府が以前行った輸出停止の警告に伴うレアアースの供給逼迫(ひっぱく)期や、2020年に起きた新型コロナウイルスの世界的な流行の初期段階のような経済不確実性の中での株価上昇と比較すると、変動幅は小さい。

レアアース市場でも、現在のところ大きな反応は見られない。レアアースには、永久磁石や暗視ゴーグル、ロケット誘導システムなどの技術に必要な独特の特性を持つ17種類の金属が含まれる。最も広く取引されているレアアースの1つであるネオジムは、需要と供給がほぼ均衡しており、本格的な米中貿易紛争の可能性が低いとみられていた2年前とほぼ同じ水準の1キロ当たり82ドル(約1万2000円)前後まで小幅に上昇している。

しかし、米中両国が関税を巡って報復合戦を繰り広げている現在、過去の地政学的緊張や禁輸措置で何が起こったのかを振り返ってみるのは興味深い。

過去の事例を知る出発点は、世界最大のレアアース供給国である中国が、尖閣諸島で中国漁船が日本の巡視船に衝突した事件を理由に日本へのレアアースの輸出を停止した2010年だ。これにより、レアアースの価格が急騰し、ライナスの株価は4倍に跳ね上がった。

この貿易紛争が収束すると、中国は供給力と価格決定力を利用してレアアース市場を飽和させ、かつては世界最大だった米カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山を含む他国の競合相手を市場から追放した。同鉱山はその後、新たな所有者となったMPマテリアルズの下で復活している。だが、中国の圧力はライナスが所有するオーストラリアのマウントウェルド鉱山には効果を発揮しなかった。同鉱山のプロジェクトは日本政府が積極的に支援する日系商社からの資金提供によって救われたからだ。

次ページ > 中国の禁輸の焦点は軍事用途の金属か

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事