経済

2023.12.13 10:30

中国が支配するレアアース、先進国の対応策は?

Shutterstock.com

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中国はいま、世界的にレアアース(希土類元素)の生産を支配していると言っても過言ではない。これらの金属は、スマートフォンから電気自動車(EV)、風力タービン、大陸間ミサイルに至るまで、ほぼすべての科学技術製品に欠かせないものだ。中国は定期的にレアアースの輸出禁止をちらつかせて経済力を誇示している。

直近では、米国が中国に対して先端半導体の輸出規制を強化し、また先端技術分野における中国への米国からの投資を制限したことに対する報復として、中国は米国へのレアアースの輸出を停止した。中国がこのような戦術をとるのは、これが初めてではない。こうした戦術は短期的には効果をあげるかもしれないが、長期的戦略としては問題がある。

レアアースとは17種類の元素の総称だ。それぞれが現代経済や防衛、日常生活において重要な役割を果たしている。例えばランタンは、ガドリニウムと同様、スマートフォンやコンピュータの画面の色を作り出すのに使われており、スピーカーが音を出せるのはネオジムとプラセオジムのおかげだ。また、テルビウムとジスプロシウムがあるからこそ、着信音がはばかられる会議中などに携帯電話を振動させることができる。こうした一部の例だけを取ってみても、レアアースの幅広い用途がわかるだろう。

米シンクタンクのブルッキングス研究所の調査によると、中国は現在、世界のレアアースの約60%を生産し、85%を加工している。ただ、この圧倒的なシェアは、レアアース鉱床の大部分が中国領内にあるという地質学的な偶然とは何の関係もない。

それどころか、名前に「レア(希少)」という文字が入っているにもかかわらず、レアアースは決して希少ではない。銀や金よりも豊富だ。特に一部に集中しているわけでもない。これらの金属の採掘と精製が環境破壊につながるため、現在中国が独占しているにすぎない。中国は最近まで、西側の先進国ほどに環境問題を気にかけていなかった。米国は環境問題を自国で抱えるのではなく、進んで太平洋の向こうへ送りつけたのだ。

米国はかつてレアアースを自給自足していたが、現在操業中の鉱山はカリフォルニア州モハーベ砂漠にあるMPマテリアルズが運営するマウンテンパス鉱山のみだ。MPマテリアルズは時々、規制上の問題から操業を停止せざるを得ないことがある。採掘しても、分離・精製という環境問題をはらんだ工程のために中国に出荷している。
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翻訳=溝口慈子

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