MPマテリアルズは米国のレアアース業界のリーダーだ。中国がレアアースの供給を牛耳っている現況に風穴を開けようと奔走しており、この3カ月で株価は75%上昇した。
一方、ライナス・レアアースは、ロケット誘導システムなどさまざまな産業・軍事技術に使用される材料を生産するオーストラリアのトップメーカーだ。株価は8月上旬以降、30%上昇している。
レアアースの価格がこの1年で16%下落、3年で65%下落していることを踏まえると、2社の株価の上昇は特に興味深い。レアアースの価格が下落しているのは主に、ライバルを市場から排除することを目的に中国が過剰に生産しているためだ。
だが投資家らは、2社の合併取引が始まると確信してレアアース銘柄を買い増している。
2社の共通点
MPとライナスは太平洋をはさんで遠く離れているにもかかわらず、オーストラリアの富豪で鉱山王のジーナ・ラインハートという大株主かつ仲介人を共有している。鉄鉱石採掘で300億ドル(約4兆6400億円)の財を成したことで知られるラインハートは、MPとライナスに加えてオーストラリア北部準州で新プロジェクトを開発中のアラフラ・レア・アースへの出資も増やしている。
ラインハートのレアアースに関する計画が一層興味深いものになっているのは、ドナルド・トランプ米次期大統領に近いという強みがあるためだ。
ラインハートはトランプの選挙運動の集会や勝利を祝うパーティに頻繁に出席した。
米国の新政権に近いというのは、輸入品に課す関税の大幅引き上げが計画されている今、外国の投資家にとって重要な点だ。
ラインハートがレアアースに関心を持っていることは以前から報じられていたが、米大統領選前にさらに強まり、追加で1億ドル(約155億円)を投じてMPへの出資比率を3.2ポイント増の8.5%に引き上げた。
ライナスとアラフラにおけるラインハートの持分は7.1%と10%だ。
将来の動きとしては、ラインハートが株式を持つ3社を統合して中国の影響を受けない世界的に大きなレアアース供給源にするというのが理にかなうものだろう。
生産と初期段階の製錬は鉱山近くで行われ、仕上げの加工と用途に応じた金属の製造は、日本や米国といった最終市場の近くで行われる。米国においてはテキサス州で新しい工場が建設されている。
トランプは投資を阻む煩雑な手続きを撤廃して米国の製造業を拡大することに意欲的だ。トランプに近い人物とラインハートが接触した際、ライナスがテキサスに建設する製錬工場の最終許可が遅れていることが話題となったかもしれない。
許可の遅れ
ライナスは直近の四半期報告書の中で、テキサス州カルフーン郡シードリフトの建設地での土工作業が、廃水管理に関する「許可の問題」で遅れていると説明した。同社によると、「2024年に始まる予定だった土木工事は、許可について検討が行われる間は棚上げされる」という。
中国がレアアースの生産量を増やしたければ、許可問題を解決する手っ取り早い方法を見つけるに違いない。現在、中国がレアアース分野を独占しているのはそのためかもしれない。
(forbes.com 原文)