「私は鉱山労働者ではない」と現在47歳のリティンスキーは言う。「当初は他の誰かが問題を解決し、事業を立て直すだろうと思っていた。だが、鉱山が破産申請したときに起こったのは歯止めのない株価急落で、財務面でも戦略面でも買い手は一人も現れなかった。採算が合わないとみなされたのだ」
「よく調べると、(鉱山の)プロセスフローにミスがいくつかあったものの、ここは世界トップクラスの鉱山だということに気づいた。間違いなく世界最高のレアアース鉱床であり、成長の余地のある素晴らしい資産に満ちている」
リティンスキーはマウンテンパス鉱山の買収に当たり、中国政府系のレアアース採掘・製錬大手である盛和資源から資金援助を受けた。2017年にマウンテンパスで生産された精鉱5000万ドル相当を盛和資源が先行販売するという契約で、これにより盛和資源はMP社の株式8%を取得した。
しかし、盛和資源はMP社の経営権を持たず、取締役会にも席はない。2017年にマウンテンパスで採掘が再開して以来、同社はMP社の生産するレアアース精鉱の一貫した買い手であったが、対中輸出停止によりこの関係も終わりつつある。

採鉱から製錬、金属加工、磁石製造まで
MP社が米国で唯一無二の立ち位置にあるのは、レアアース鉱山だけでなく、製錬能力をも有しているからだ。
イーロン・マスクは中国のレアアース輸出規制を受け「重要なのは、レアアース元素を製錬して電気モーター用磁石を製造する能力である点に留意が必要だ」とXに投稿している。
そして、それこそMP社が行っていることだ。同社はマウンテンパスで産出されたレアアース鉱石を製錬する一方、今年1月からはフォートワースでネオジムとプラセオジムからなるNdPr合金の商業生産に着手。新工場ではNdPr合金を原料とする磁石のパイロット生産も開始しており、年内に商業生産へ移行する予定だ。
新工場では第一段階として年間1000トンのレアアース合金と磁石を生産可能だが、リティンスキーは3倍の3000トンまで増やそうと計画している。長期的にはさらに大きなチャンスを見込んでおり、「そこからはまさにあらゆる面で事業を大きく拡大できると踏んでいる」と自信を見せる。