トランプ米大統領の発言が発端となった広範な市場の下落は、ほかでもない「トランプの盟友」を自称するイーロン・マスクのテスラの株価に大きなダメージを与えた。米電気自動車メーカー、テスラの株価は4月21日の市場で約6%下落し、8日以来の安値の227ドルをつけた。
この日の米株式市場は、トランプが連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長との対立を激化させ、市場に警戒感が広がったことを背景にして大幅安を記録した。S&P500種株価指数は21日に2%以上下落し、9日以来の安値を記録した。
なかでも大きな下落に見舞われたのがテスラだが、同社は米国時間4月22日に第1四半期(1〜3月)決算発表を控えている。ウォール街のアナリストは今回の決算についてすでに悲観的な見通しを示しており、ファクトセットがまとめた予想平均は、1株当たり利益が0.41ドル、純利益は14億ドル(約1970億円)と2021年第1四半期以降で最も低い水準を見込んでいる。
テスラは今月初め、2025年の年初の3カ月間の納車台数が2022年以降で最悪に落ち込んだことを公表したが、その背景には、マスクのトランプ政権への関与が指摘されている。
そんな中、かつてはテスラの強気派として知られたウェドブッシュ証券のダン・アイブスは、「マスクが政府効率化省(DOGE)の役職にとどまるならば、テスラはコードレッド(非常事態)に直面する」と20日の顧客向けメモに記していた。「テスラは22日の決算発表において『立て直しのビジョン』を示す必要がある。マスクがトランプ政権にとどまるならば、テスラの未来は変わってしまうかもしれない」と彼は主張している。
かねてからテスラに強気な見方を示していたアイブスは、ここ数週間、最も声高に「マスクによるブランドの毀損」を非難するアナリストの一人になっている。
テスラ株の下落を受けてマスクの保有資産は21日に約100億ドル(約1兆4100億円)減少した。それでも、彼は今もなお世界で最も裕福な人物であり、フォーブスのリアルタイム推計によれば、総資産は3540億ドル(約49兆9000億円)に達している。また、2位のアマゾンのジェフ・ベゾスとの差は1650億ドル(約23兆3000億円)以上も開いている。
テスラの株価は、昨年12月に記録した史上最高値から約53%下落している。