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CEOs

2025.04.02 10:00

全米に広がる「テスラ離れ」 他社のエンブレムに付け替えるEV所有者も

米カリフォルニア州で、「イーロン・マスクの気が狂っていることを知らずにこの車を買ってしまった」と書かれたステッカーが貼られた米電気自動車(EV)大手テスラのEV。2025年3月12日撮影(Justin Sullivan/Getty Images)

米カリフォルニア州で、「イーロン・マスクの気が狂っていることを知らずにこの車を買ってしまった」と書かれたステッカーが貼られた米電気自動車(EV)大手テスラのEV。2025年3月12日撮影(Justin Sullivan/Getty Images)

「ブランドの評判を高めるには何年もかかるが、壊すのはほんの一瞬だ」という言い伝えがある。米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同社を世界的なEV企業に発展させるまでに15年以上を要した。だが、同CEOの最近の一連の過激な言動により、テスラの売上とブランドイメージはわずか数週間で急落した。マスクCEOは政治活動に手を広げ、多数の米連邦職員を解雇したほか、独極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持を表明するなど、国内外で物議を醸している。

ドイツでは2月、テスラのEV登録台数が1429台となり、前年同月比で76%落ち込んだ。米カリフォルニア州では2024年第4四半期にテスラの販売台数が前年同期比約8%減少。同社の株価は15%下落し、過去5年間で最悪を記録した。

米ブルームバーグ通信は、過去3カ月間でテスラに対する消費者の信頼感と感情が2023年以来最低水準に落ち込んでいると報じた。特に、マスクCEOが米大統領選挙に関与したことで、昨年のカリフォルニア州での事業に悪影響を及ぼしたことはほぼ確実だと伝えた。全米ではここ1~2カ月の間にテスラのショールームでの組織的な抗議活動や、同社のEVや充電器、店舗に対する破壊行為が急増している。

全米で加速する「テスラ離れ」

マスクCEOの最近の過激な言動により、テスラ製EV購入者の多くが同ブランドに対する不安や幻滅を抱いており、創意工夫を凝らしてマスクCEOとの関係を断ち切ろうとしている。最近では、テスラのエンブレムを外して独アウディや日本のマツダなど他の自動車メーカーのエンブレムに付け替える所有者もいるという。そのほか、「イーロン・マスクの気が狂っていることを知らずにこの車を買ってしまった」と書かれたステッカーの売上も急増している。このようなステッカーは米国だけでなく、ドイツでも売れている。ステッカーを販売するマシュー・ヒラーは、1日に400~500枚ほどの売上があると語る。

米国では2月27日、西部ポートランド郊外のテスラのショールームに対する発砲があり、警察が出動する騒ぎとなった。3月3日には東部ボストン近郊のショッピングモールに設置されたテスラの充電ステーション7カ所が放火された。さらに、中部シカゴでは、青いテスラ車に白いペンキでマスクCEOを嫌悪する落書きが見つかった。相次ぐ事件を受け、テスラ製EVの所有者は自分の車も同様の被害を受けるのではないかと懸念しており、嫌がらせを防ぐために車載カメラを設置した人もいる。

愛される存在から嫌われる存在へ

テスラでは2003年の創業以来、特にこの15年ほどの間にさまざまな出来事があった。EVメーカーである同社は当初、化石燃料の支持者からは軽蔑され、ごく一部の愛好家のみに崇拝される、ほぼ無名の企業だった。その無名の企業を世界的に知られるブランドとして確立するまで、EV愛好家とテスラの社員は多大な努力をしてきた。

ところがここへ来て、マスクCEOの米ツイッター(現X)の買収や政界への進出などにより、テスラブランドは崩壊しつつある。この予期せぬ事態にテスラ製EVの所有者の多くがユーモアを交えて対応しようとしているものの、これほど短期間にブランドイメージの悪化を目の当たりにするのは驚くべきことだ。

ブランドを確立するには何年もかかるが、そのイメージを破壊するにはほんの数秒しかかからないというのは本当だ。マスクCEOがこの事態を食い止めようとするのかどうか、そうだとすればどのように行うのかが興味深い。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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