米電気自動車(EV)大手テスラのドイツでの売上が2月、前年同月比で76%落ち込んだ。同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の最近の一連の過激な言動に対し、消費者の心理が大幅に悪化しているものとみられる。
ドイツ人の9割超がテスラ製EVを「絶対に購入しない」
独ニュースサイト「Tオンライン」が10万人以上の国民を対象に行った最新の世論調査では、回答者の94%がテスラ製EVを「絶対に購入しない」と答えた。これに対し、テスラ製品の購入を「検討する」と答えた割合はわずか3%にとどまった。
Tオンラインは独メディア企業シュトレア傘下のニュースポータルサイトで、ニュースのほか、オンラインショッピングや電子メールなどのサービスを提供し、月間で1億7900万回以上のアクセスがある。
ドイツでは2月、テスラ関連以外のEVの登録台数が前年同月比32%増加し、5万5490台に上った。テスラに対する消費者の支持が急速に低下していることで、同社の将来性が今後大きく揺らぐ可能性もある。
この不振の背景には、テスラのEV「モデルY」の切り替えや「モデル3」の販売不振、競合他社との競争が激化していることなど、複数の要因がある。だが、特にドイツでテスラが販売不振に陥っている原因としては、マスクCEOのドイツ地方選挙への介入や独極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持に対する地元住民の反発を挙げる専門家もいる。
マスクCEOの過激な言動はたびたび炎上
ドナルド・トランプ米大統領の就任を祝う集会で、マスクCEOが見せた手の仕草は「ナチス式敬礼」ではないかとの批判を巻き起こした。実際、同CEOはこれまでたびたびナチスやファシズムを擁護する発言を行っており、ドイツでの評判が急速に悪化している。こうした政治的に過激な言動はドイツだけにとどまらず、欧州全体でのテスラの販売機会を損なうことになる。
ちなみに、AfDを支持したドイツの有権者はわずか20%程度に過ぎず、極右である同党は伝統的にテスラ製品に反対の声を上げてきたことを鑑みると、テスラは同党の支持者による売上増を期待することもできないだろう。
先述の10万人を超えるドイツ国民が参加した世論調査結果を見る限り、同国でのテスラの運命はほぼ決定的になったようだ。圧倒的多数のドイツ人がテスラに背を向ける中、この状況に歯止めをかける、あるいは少なくとも減速させるためには、マスクCEOがテスラと距離を置き、CEOの座を他の誰かに譲るしかないことは、ほぼ間違いない。もちろん、同CEOは政治活動も控えめにしなければならないかもしれないが、現在の行動を見る限り、そうはならないだろう。