世界一の富豪であり、ドナルド・トランプ大統領のコスト削減担当長官も兼任するイーロン・マスクは、トランプによる関税が市場を動揺させる最中に純資産に大きな打撃を受けた。その影響で、マスクが率いる多国籍自動車企業テスラの株価も低迷している。
フォーブスのリアルタイム推計によると、3月6日にマスクの純資産は88億ドル(約1兆3000億円)減少し、3428億ドル(約50兆7000億円)となった。
テスラ株が1株480ドルの史上最高値で取引を終えた昨年12月17日には、マスクの資産は終値ベースで4640億ドル(約68兆7000億円)を記録していたが、そこから1212億ドル(約17兆9000億円)減少している。
テスラ株は米国時間3月6日に6%下落し、終値は263ドル強となった。これは昨年末の最高の終値から約45%下落した水準だ。
テスラは米国時間3月6日の取引を、大統領選挙当日以来の最安値で終えた。
カナダ、中国、メキシコに対するトランプの関税が投資家心理を冷やしたことで、S&P500は1.8%下落し、2025年の最安値をつけた。この動きと同時期にテスラ株も下落している。
それでもマスクは依然として世界一の富豪であり、2位であるメタのマーク・ザッカーバーグCEOとの差は1200億ドル(約17兆8000億円)以上になる。
マスクが失った1212億ドルを例に挙げると、世界で10番目に裕福なマイクロソフト元CEOのスティーブ・バルマーの推定純資産は1189億ドル(約17兆6000億円)である。アジアで最も裕福なインドのムケシュ・アンバニの資産は898億ドル(約13兆3000億円)だ。
大統領選挙当日と比べて米国時間3月6日にテスラ株が上昇した割合は4.8%となるが、昨年12月17日までに示した91%の上昇率と比べるとごくわずかなものだ。テスラ株は当初、マスクがトランプと共和党の選挙活動に約3億ドル(約440億円)を寄付したことで大きく値上がりが期待されていた。特に自動運転技術に対する規制緩和が同社に有利に働くと見られていたからだ。マスクの資産は選挙当日から780億ドル(約11兆5000億円)増加しており、SpaceXやxAIなどの未上場企業の評価額上昇もその一因となっている。
テスラは特に関税の影響を受けやすい企業だ。中国は同社の電気自動車にとって2番目に大きい市場であり、同社を含む米国の自動車メーカーはカナダからの輸入部品にも依存している。テスラの最高財務責任者であるヴァイバヴ・タネジャは1月に「当社は依然として世界各地からの部品調達に大きく依存しています。そのため関税は当社の事業や収益性に影響を与えるでしょう」と警告した。マスクは政府効率化省(DOGE)の長官を務め、トランプ政権において最も重要なメンバーの1人と見なされている。
「マスク氏のDOGEおよびトランプ政権全体への関与は、米国や欧州の一部の購入者に影響を及ぼす可能性があります。これは需要の観点から状況を複雑にするでしょう」 と、Bairdのアナリストであるベン・カロは米国時間3月6日の顧客向けメモで述べている。