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2025.03.07 09:30

米航空局への衛星通信「スターリンク」導入を目指すマスク、利益相反と失敗の可能性

イーロン・マスク(Andrew Harnik/Getty Images)

イーロン・マスク(Andrew Harnik/Getty Images)

イーロン・マスクが率いる宇宙開発企業スペースXは、連邦航空局(FAA)の古びた通信システムのアップグレードに向けて、同社の衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」の提供を目指している。事情に詳しい関係者が先月末のブルームバーグの取材に明かしていた。

この動きを巡っては、マスクがトランプ政権に深く関与していることから、利益相反の懸念が持ち上がっている。さらに、この通信システムの改修にあたっては、ベライゾンが24億ドル(約3570億円)規模の15年契約を結び、老朽化した銅線を高速の光ファイバー網に置き換える計画が進行中であることが、考慮されていないようだ。

ブルームバーグによると、FAAに派遣されたスペースXのエンジニアは、マスクの指示により、数千台のスターリンクの端末を設置すると職員に伝えたという。

しかし、この取り組みは、そもそも理にかなっていない。スターリンクの端末は、現状ではFAAの米国全土をつなぐ通信ネットワークの基盤として機能するだけの帯域幅や信頼性を備えていない。さらに、スペースXには、複数の通信技術を統合したソリューションの主契約者としての実績が見当たらない。

「スターリンクのシステムは、バックアップ手段や代替のプロバイダーとしてなら有効だ。しかし、FAAの通信ネットワーク全体の刷新を、スペースXが主導するようなことは考えられない」とコンサルタント会社キルティスペースのアナリストのキム・バークはフォーブスに語った。

特に懸念されるのは、スターリンクの通信の遅延(レイテンシー)の問題だと航空安全分野の非営利組織である飛行安全財団(FSF)のハッサン・シャヒディは指摘する。「安全性が重要なシステムにおいて、通信ネットワークの遅延や途切れは許されない。航空管制が必要とするのは、リアルタイムの情報だ」

FAAは長年にわたり、航空管制や通信システムの近代化に苦戦しており、現在のシステムの維持すらままならない状況だ。米国政府監査院(GAO)の昨年の報告書は、FAAは138の航空管制システムのうちの37%の維持管理に必要なリソースを確保できていないと指摘していた。

ベライゾンの進捗が「遅すぎる」

ベライゾンの契約には、データ管理や新たな通信ネットワークのメンテナンスが含まれているが、これはFAAが数十年をかけて進める数千億ドル規模の「NextGen」と呼ばれる取り組みの一部となる。このプログラムは、レーダーのような地上ベースの技術から、衛星ナビゲーションやデジタル通信を活用するシステムへの移行を目指している。

しかし、通信ネットワークの具体的な構築計画はまだ確定していない。1月にFAAの副長官を辞任したケイティ・トムソンは、同局の幹部らが、ベライゾンの進捗が遅すぎることを懸念していたと述べていた。

それでも、ベライゾンの契約を入札なしでスペースXに引き渡せば、FAAの規則に違反し、ベライゾンが訴訟を起こすための理由を与えることになり、プロジェクトの遅延を招く可能性がある。ワシントン・ポスト紙によると、FAAの幹部らはベライゾンの通信契約をスペースXに移管するという要請に抵抗しているという。

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編集=上田裕資

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