マスク自身は、このプロジェクトの主導権を握ることを公には求めていないが、先週のX(旧ツイッター)の投稿で、スターリンクが「航空管制の接続を回復するための一時的な解決策だ」と主張し、FAAに端末を無償で提供していると述べていた。また、彼はベライゾンのまだ運用されていないシステムが、「崩壊寸前だ」と誤った主張をしたが、その後、その誤りを認めていた。
通信の「遅延」問題
スターリンクは、光ファイバーを用いた接続のコストが高い遠隔地のFAAの施設の通信手段としては有力な選択肢になり得る。同局は先月、アラスカのような地域の通信障害が長年問題となっていることを踏まえ、スターリンクを活用して気象情報を提供する可能性を評価していると発表した。しかし、スペースXがFAAの入札要件をすべて満たすのは難しい。なぜなら、同社の衛星インターネットを用いた通信は、地中の光ファイバーを利用するよりも信頼性が低いからだ。
FAAの入札資料によると、管制官とパイロット間の音声通信などの重要なサービスにおける通信の遅延は、最大50ミリ秒以内であることが求められている。しかし、スターリンクの遅延はそれを超える場合があり、同社のウェブサイトによると25ミリ秒から60ミリ秒の遅延が発生するとされている。さらに、昨年のある研究によれば、スターリンクの衛星は、常に地球を周回しているため、地上の利用者との接続が15秒ごとに異なる衛星に切り替わるたびに30~50ミリ秒の遅延が発生するとされていた。
スペースXは、この遅延の問題を軽減するために、米連邦通信委員会(FCC)に対し、衛星の軌道の高度を低くすることや、より広い周波数帯を利用する許可を求めている。しかし、競合他社はこれに強く反対し、FCCにこの申請を却下するよう求めている。
民主党議員は強く反発
またスペースXは、スターリンクが都市部の密集地帯で多数の顧客をサポートできるとは一度も主張していない。同社の衛星は、特定の地域内で利用できる帯域幅に限りがあるためだ。これは、主要空港の近くにある数百人規模の管制施設でスターリンクが適切に機能するのかという疑問を生じさせる。さらに、衛星通信には、太陽嵐による地磁気擾乱などの特有の障害リスクが存在する。
しかし、FAAの変化は急速に進む可能性がある。トランプ政権の運輸長官ショーン・ダフィーは、先週のFOXニュースの番組で、「1年から1年半の期間で大規模なアップグレードを行い、システムを改善し、航空管制官を支援し、空の安全を守る」と述べていた。
マスクや彼の支持者が「迅速性と効率性」を強調する一方で、民主党議員らはスペースXの関与を「腐敗」と考えている。民主党のリチャード・ブルメンタール上院議員は、ダフィーに宛てた書簡で、「マスクが所有するスターリンクをFAAの契約業者として選定することは、政府の基本原則が防ごうとしている最も腐敗した利益誘導だ」と非難した。