【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

サイエンス

2025.04.16 18:00

「自爆するアリたち」東南アジアで命と引き換えに仲間を守る小さな英雄の真実

Getty Images

Getty Images

東南アジアの熱帯雨林の奥深くでは、ある自然の驚異が日々繰り広げられている──犠牲の定義を覆す、爆発的な英雄主義の物語だ。

その森にいる小さなアリの1種は、考えられないほど極端なコロニー(生物集団)の防衛術を発達させた。

このアリは自分の体を爆発させることで、侵入してくる敵に目掛けて有毒な分泌物を放出し、その脅威を取り除くことで知られている。この驚くべき防御メカニズムは、何世代もかけて丹念に磨かれて進化してきた戦略だ。

個を犠牲にして集団を守るこの防衛戦略は、絶えまない警戒を必要とする環境の進化圧(自然淘汰により進化をうながす方向にかかる自然の圧力)を、幾世代にもわたって受けることでかたちづくられてきた。

自爆するアリは複数種いる

ヒラズオオアリ亜属(Colobopsis)の種には自爆するアリ(ジバクアリ)が多くいるが、そのうちの1種は特に詳しく研究されている。Colobopsis explodensというジバクアリの一種は、ボルネオ島、タイ、マレーシアで見つかっており、天高くそびえるフタバガキ科の樹木を住処としている。このアリの巣は広大で、2500平方メートルを超える群葉(茂った葉)にまたがることもある。

一見すると、このアリは控えめだ。たいてい体長はほんの数mmで、小柄な働きアリはほっそりした赤茶色の体をもつ。だが攻撃を受けると、働きアリは自らの体を破裂させる。外骨格を引き裂くほどの力で腹部の筋肉を収縮させ、死を招く化学物質の混ざった、ねばねばとした黄色い分泌物を放出するのだ。

オートサイシス(Autothysis:まさに「自己犠牲」を意味する)と呼ばれるこの行動は、攻撃者の動きを封じ、ときには相手を死に至らしめることもある。自らの体を武器にして仲間を守る種はいくつか知られているが、このアリもそのうちの一つだ。この行動に伴う犠牲は否定しようがないが、得られるものは計り知れない──コロニーが生き延び、女王が難を逃れ、集団の未来が守られるからだ。

次ページ > ジバクアリのもう一つの能力

翻訳=梅田智世/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事