北米

2025.04.10 11:30

米国は150兆円もの国防費が必要なのか? 米中軍拡競争の恐れも

米国のドナルド・トランプ大統領(左)とピート・ヘグセス国防長官。2025年3月21日撮影(Anna Moneymaker/Getty Images)

核兵器や戦闘艦、あるいは莫大な費用がかかるが効果が実証されていないミサイル防衛システムの構築を進めたとしても、米国の安全保障上の喫緊の課題にはほとんど対処できないだろう。実際にそうすれば、軍拡競争を促し、米中という世界最強の2国間の戦争の可能性を高めるだけだ。この核武装した世界の2大大国が戦争を起こせば、すべての関係国にとって未曽有の大惨事となる可能性がある。

また、トランプ政権を支持する米西海岸シリコンバレーの技術系企業が、機敏で殺傷力のある次世代兵器を手頃な価格で大量に生産し、自国に決定的な優位性をもたらすという考えに対しては、疑ってかかるべきだ。「奇跡の兵器」と優れた軍事技術が米国民を救うという主張は、ベトナム戦争からイラク戦争やアフガニスタン戦争まで、どの時代でも現れたが、いずれの事例でもこれらの主張は実証されず、高額で高性能な兵器の所有より、動機や知識の方が重要であることが証明された。

要するに、最近の米国の戦略には、軍事優先の外交政策を強化することが自国の安全を保障することを示唆するものは何もない。他方で、非軍事的な国際関係構築の手段を軽視することで、世界の危険性が増すことは示されている。具体的には、気候変動から感染症の世界的な流行や格差の拡大に至るまで、従来とは異なる安全保障上の課題を解決することは、不可能ではないにせよ、一層困難になるだろう。

国防総省の予算が1兆ドルというのは聞こえは良いが、国家の緊急課題があまりにも多く放置されている今、軍備増強を追求するのは大きな誤りだ。安価で効果的な防衛戦略を構築する望みがあるならば、トランプ政権と議会は有権者の声に耳を傾ける必要がある。われわれが直面している課題の大半が軍事的解決策を持たないという本質を考えれば、国防総省の予算に1兆ドルも計上することは、1兆ドルの失策となるだろう。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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