J.D.ヴァンス米副大統領やピート・ヘグセス国防長官を含むトランプ政権の当局者たちが、イエメンでの軍事作戦について議論していた通信アプリ「Signal(シグナル)」のチャットに、誤ってジャーナリストが招待されていたという衝撃的なニュースが報じられた。
米国土安全保障省(DHS)のサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)のある当局者は、「この件は、あらゆる意味でまったくもって馬鹿げている」とフォーブスに語った。
「彼らは認可されていないプラットフォーム上で機密情報を議論していた。これは、本来なら誰かが投獄されてもおかしくない事態だ」とこの当局者は述べた。このような機密情報を巡る議論は、政府発行のデバイスを用いて専用の施設内でのみ行われるべきであると大統領令で定められており、機密情報の不適切な取り扱いは、スパイ防止法違反の可能性がある。
「この政権の人間たちはジェームズ・ボンドになったつもりだが、実際の能力はドクター・イーブル(『オースティン・パワーズ』のキャラクター)と変わらない」と当局者は続けた。
別のCISA職員によるとシグナルは、高リスクの職務にある職員の私的な通信手段としては推奨されているが、政府の業務用アプリとしては正式に認可されていないという。「シグナルは、優れたアプリだが問題は、その使い方にある」とその職員は語った。
もしヘグセスらが私物のデバイスでこのアプリを使用していたのであれば、それは政府のデバイスほどのセキュリティを備えていないため、ハッカーが侵入して通信を傍受する可能性が高まることになる。「私物デバイスで機密情報をやり取りするのは、極めてまずい行為だ」とその職員は語っている
「メッセージの自動削除」の問題
さらに悪いことに、『アトランティック』誌の編集長のジェフリー・ゴールドバーグは、自身がそのチャットに招待されたことを報じた注目の記事の中で、チャット内のメッセージが「4週間後に自動削除される設定」になっていたと書いている。これは、情報公開請求や将来の調査に備えて公式記録を保存するよう義務づける米政府の記録保持法に違反している可能性がある。
3月24日に民主党のエリザベス・ウォーレンを含む14人の上院議員がトランプ大統領に書簡を送り、このチャットでメッセージが消去される設定になっていたことは大統領記録法に違反するものであり、「さらなる重大な公的信頼の裏切りだ」と指摘した。
CISAの職員の1人は、政府の記録保持法を回避するためにシグナルを使用したこと自体が、過去の政権ならば関係者全員を即座に解任する正当な理由になっただろうと語った。1月にCISAを離れたトッド・ビアズリーも、「これはかなり深刻なセキュリティ侵害のように思える」と述べた。
そして、この件にはまだ続きがある。それは、本来そこにいるべきでないジャーナリストがこのチャットに加えられたことに、誰も気づかなかったという事実だ。「機密保持許可を持つ人間が、未許可の人物を含むチャットで機密情報を議論していたとすれば、本来であれば、その場にいた全員が即座に許可を剥奪され、職を失っていてもおかしくない」とビアズリーは語った。