米陸軍においては2024会計年度(23年10月〜24年9月)に15件の最も深刻な「クラスA」の航空事故が発生し、11人が死亡した。また、その前年の2023会計年度には9件のクラスAの事故で14人が死亡し、2010年以降で最多の死亡者数を記録していた。陸軍の調査によると、過去5年間におけるクラスA事故の82%は、人的ミスが主要因とされている。
陸軍が認めている事故増加の原因の1つは、経験の浅い搭乗員の増加だ。米軍のアフガニスタンからの撤退とイラクでの部隊の縮小を受け、ベテランのパイロットが大量に離職した。陸軍は、これを受けて訓練の在り方を改善する方針を示しているが、先日アメリカン航空機と衝突したヘリコプターのブラックホークは、夜間訓練飛行の最中だった。
一方、フォーブスの取材に応じた現役および退職した陸軍パイロットらは、初等訓練のためのヘリコプターの数が不足していると述べている。また、現役部隊や州兵の飛行時間も十分確保されておらず、議会予算局の報告によると、ヘリコプターが95%を占める陸軍航空機の平均飛行時間は、2023年に198時間だったが、これは2011年のピーク時の平均302時間の約3分の2に減少していた。
「かつては、陸軍の誰もが近い将来の派遣を想定されていたため、全員が訓練を受ける必要があった。しかし、戦争が終わると予算も減らされる」と、ある陸軍関係者は語った。
「最低限の飛行時間を確保すること自体が難しくなっている」と、関係者たちは述べている。そして、その最低基準も決して高くはない。搭乗員は最低で、60日に1回飛行すればよく、ブラックホークのパイロットは6カ月で48時間の飛行が義務付けられている。しかし、パイロットに課せられる膨大な事務作業や燃料購入予算の不足、さらに指導教官やテストパイロットなどの熟練人材の不足によって、この基準を満たすのも困難になっているという。
多くのパイロットが、期限が近づくまで飛行時間を稼げず、「実践飛行の機会が少ない状態が続いている」とフォーブスに語った。
こうした状況の深刻さは、2023会計年度の飛行時間にも表れている。現役部隊は、予算がついた33万4000時間のうち80%しか飛行できなかった。さらに陸軍は2024年の飛行時間目標を前年より4分の1削減する方針を決定した。戦闘航空旅団の隊員の月間飛行時間は8.7時間にまで減少し、2023年の計画より18%少なくなる見通しとされた。
民間とのパイロット獲得競争
飛行時間の減少は、陸軍パイロットの経験値が低下していることと相まって、より深刻な問題となっている。過去10年間、陸軍を含む米軍全体はベテランパイロットの確保に苦慮してきた。ある者は戦地での疲弊で、またある者は訓練飛行ばかりの日々に魅力を感じずに退役した。議会は、パイロットの引き留め策として報奨金を引き上げたが、パンデミック後にパイロット不足に直面した民間航空業界が給与を大幅に引き上げたことで人材を奪われた。