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北米

2025.02.07 08:00

米首都で67人死亡の航空事故、背景に「軍のパイロット不足」か

米陸軍のヘリコプター「ブラックホーク」(Shutterstock .com)

陸軍は、人員補充のために採用を強化し、2020年には新任パイロットの兵役義務期間を6年から10年に延長した。現在、年間約1400人の新人が飛行訓練を開始しており、これは過去20年間で最低だった980人から増加している。また、経験の浅いパイロットが教官に昇進するケースも増えていると、ある退役軍人はフォーブスに語った。

しかし、初等訓練は約1年半にわたるが、訓練用ヘリコプターの不足により、初心者パイロットは安定した飛行時間を確保できていないという。彼らは、ヘリコプターの不足により、当初予定されたスケジュールを先送りして、他の日にまとめて飛行することを強いられている。ある州兵の教官パイロットは、「毎日1時間半ずつ飛べるなら、もっと学べるはずだ。今の訓練では基礎が十分に固まらない」と語った。

ワシントンでの事故において、経験不足や飛行のブランクが影響したかどうかはまだ不明だが、墜落したブラックホークを操縦していたのは、1000時間の飛行経験を持つ教官パイロットのアンドリュー・イーブス准尉と、500時間の飛行経験を持ち、機長資格を取得したレベッカ・ロバック大尉だった。

「数十年前なら、その飛行時間は決して多いとは言えなかった」と、1980年代後半から2000年代後半まで飛行し、安全管理官を務めた元陸軍ヘリコプターパイロットは語る。彼の時代には、イラクやアフガニスタンでの戦闘準備のため、パイロットは年間数百時間の飛行経験を積んでいたという。「当時なら、彼らはまだ若手の教官や若手のパイロットに分類されていただろう」と彼は語った。

墜落したブラックホークの2人は、国防総省の高官やVIPをワシントンD.C.周辺で輸送し、緊急時には避難させる任務を担う第12航空旅団に所属していた。この部隊のパイロットは、許可された飛行ルートを暗記し、指定された最大高度と最小高度を把握しておく必要がある。地図を見ることなく飛行できるようにするためだ。

しかし、今回墜落したブラックホークは、許可された最大高度200フィート(約60メートル)を約100フィート(約30メートル)上回る高度で飛行し、さらに予定ルートの西側を飛んでいた。事故発生時、同機はレーガン・ナショナル空港に着陸しようとしていた旅客機と衝突した。

陸軍の上層部は、一部の根本的な問題に対処しようとしていた。彼らは、昨年4月に過去6カ月間で12件の墜落事故が発生し10人が死亡したことを受け、すべての部隊に追加訓練の実施を命じていた。また、9月の陸軍会議でジェームズ・ミンガス副参謀長は、「パイロットの訓練時間が足りない」と認めていた。そして10月、陸軍は新たな訓練機と指導契約の入札を開始し、「新任パイロットの訓練の質を向上させ、コスト削減と効率化を図る」と説明していた。

これらの取り組みが、最終的にはより安全な飛行につながることが期待されている。しかし、最も重要なのは陸軍が安全カルチャーを強化していくことだ。「陸軍の最上層から最下層に至るまで、こうした問題について議論を行う必要がある」と、元隊員の1人は語った。「私がいた部隊では、その議論すらなかった」と彼は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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