あらゆる職業を更新せよ!──既成の概念をぶち破り、従来の職業意識を変えることが、未来の社会を創造する。「道を究めるプロフェッショナル」たちは自らの仕事観を、いつ、なぜ、どのように変えようとするのか。『転職の思考法』などのベストセラーで「働く人への応援ソング」を執筆し続けている作家、北野唯我がナビゲートする(隔月掲載予定)。
北野唯我(以下、北野):岡本さんとは前職の外銀にお勤めの時代にお会いしています。だからポーカー世界大会の女性部門で優勝した報道を見て、本当に驚きました。
岡本詩菜(以下、岡本):日本でもここ1年ほどでポーカーの話題を大きなメディアで取り上げてくれる機会が増えました。ポーカーにはキャッシュゲームとトーナメント競技があり、私がプレイしているのはトーナメントです。
北野:優勝賞金もすごい額ですね。
岡本:参加料ごとに競技者のレベルは異なって、金額が上がるほどプロがしのぎを削る世界です。メインは参加料1万ドルのトーナメント。そのなかだと、私は男女総合で上位10~15%ほどの実力です。
北野:ポーカーは心理戦の要素も強いのでは?
岡本:世間で思われているほど心理戦の要素は多くなく、理論に基づいた戦略がとても大事なので、基本的にはシンプルに勉強ができる人は強いです。私が学ぶのは、お互いが搾取されないようにプレイしたときに収束する戦略で、ゲーム理論に基づいています。「こういう状況の場合は、この行動を取れば期待値が最も高くなる」といったパターンを暗記するんです。
北野:メンタルの強さはどれくらい勝敗に影響しますか。
岡本:とても大きいですが、過小評価されていると感じます。本人ですらメンタルがアクションを左右していると気づいてないケースが多いです。むしゃくしゃしてオッズが悪い勝負を受けてしまうとか。ポーカーという数字が出ているゲームですら期待値通りに行動できないのであれば、数字がわからない世の中のほとんどのことに対してはおそらく感情で動いてしまっている。自分が思っている以上に、メンタルが人の人生を左右していると気づけたのは、ポーカーを学んだ利点でした。
北野:直感で挑んで野性的に勝つ、そんなプレイヤーはポーカーの世界にあまりいない?
岡本:上位のレベルになるといませんね。1回の試合だけなら、おそらく運の要素が半分ほどなので初心者も勝てて楽しめますよ。しかし長期的に見れば、スキルの比重が8割くらいでしょう。
北野:1回勝負なら僕が岡本さんに勝てる可能性もゼロではない?
岡本:ゼロではないどころか結構あります。短期的にも長期的にも、ラフにも真剣にも取り組めるマインドスポーツがポーカーです。
