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キャリア

2025.04.12 15:30

ポーカープレイヤー岡本詩菜 「勝つための戦略」を磨き抜く勝負師

岡本詩菜|ポーカープレイヤー

COLUMN|インタビューを終えて

高度な知的戦略で、「期待値」と「分散」を操るマインドスポーツ

その日、渋谷の公園通りを一本入ると、ガラスドアの向こうにカジノバーが見えた。こんな大通りのすぐ側に本格的なスペースがあるとは知らなかった。

世界大会の女性部門でチャンピオンになったポーカープレイヤー。しかもポーカーを始めてわずか5年での優勝。これだけ聞くとどれだけ天性の才能があったのだろうか? センスがあったのか? と思いたくなるが、岡本詩菜さんは言う。「私はセンスや地頭という言葉は使わない。努力し続ければ達成できると強く信じられることが重要」と。強い言葉だ。
 
もちろんポーカーには運の要素も入る。そのため1回きりの勝負では素人が勝つこともある。一方で数を重ねるごとに勝率は実力差を反映してくる。理論と技術を高めた人が勝利を収める。しかも、トーナメントといわれる巨額の賞金をかけた試合では、メンタルと体力も問われる。心技体。まさにスポーツなのだ。

では、彼女が信じられないスピードで実力を上げてチャンピオンになれたのはなぜか?

その理由が「努力して学べば強くなれる」という言葉に表れている。岡本さんの経歴を見れば、本当に彼女が信じている言葉だと想像できる。京都大学工学部から外資系の投資銀行。まさに受験や就職という、ある程度再現性が高い世界でも結果を残してきたからこそ、言葉に真実味がある。

取材の後半、岡本さんは普段の試合では見られないリラックスした表情で教えてくれた。いわく、ポーカーをやって人生の意思決定が変わった。ポーカーをすると今のオッズ(期待値)が数字でわかる。でも行動できないことがある。勝負の結果には分散が起こる。同じように人生にも分散があるし、人の人生への見え方も変わったように思う、と。

分散、それは試行回数が一定のボリュームを超えないと、結果が期待値に収れんされない、ということ。受験や就職もまた外部環境に大きな影響を受ける。単発の結果だけ見ても、本来の実力を表していないこともある。「期待値」と「分散」はどんな人の人生にとっても影響を受けている概念なのは間違いない。
 
さて、みなさんはポーカーにどんなイメージがあるだろうか。私は彼女の話を聞いて180度イメージが変わった。

「忖度のない真剣勝負の世界で、高度な知的戦略を繰り広げるスポーツ」。これが取材を終えた私の感想だった。


北野唯我◎1987年、兵庫県生まれ。作家、ワンキャリア取締役CSO。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問などを兼務し、20年1月から現職。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『仕事の教科書』ほか。近著は『採用の問題解決』。

文=神吉弘邦 写真=桑嶋 燦

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