好循環に入る方法がある
北野:あらためてポーカープレイヤーという仕事の魅力は。
岡本:非日常感ですね。瀬戸際の戦いをしているときは常に心臓がドキドキしてアドレナリンが出ていますし、優勝したときの栄誉や称賛は格別です。海外トーナメントでは大きな賞金が取れる夢もあるし、シンプルに見た目が格好いいです。過去の優勝体験が悔しい負けを支えてくれる部分があります。
北野:ほかのプレイヤーのメンタルも判断できますか?
岡本:女性よりも男性のほうが感情的になりにくい印象はあります。鍛えている30代ぐらいのシュッとしたプレイヤーはメンタルが安定していて、基本的に強いです。優しそうな人も結構メンタルが安定しています。人って、顔に生き様が出るじゃないですか。
北野:かなりのことが見た目でわかる。
岡本:プレイに参加していないときにも身振りが落ち着かないような人だと、メンタルも不安定です。姿勢を崩さず最低限の動きだけをする人、ちゃんと相手のことを見てプレイする人は強いですね。
ただ、そんな「人読み」やセンス、運が必要なギャンブルだとポーカーは思われがちですが、勉強の要素もたくさんあります。学びさえすれば誰もが強くなれるマインドスポーツとして認識してほしいし、この2~3年で教材も増えました。努力すれば強くなれると信じることが大事です。
北野:もしプロのポーカープレイヤーになりたい15歳の若者がいたら、どんなアドバイスをしますか。
岡本:初めからプロを目指すことはやめたほうがいいと言います。参加にはお金が必要だし、分散の要素がとても大きいスポーツなので、強くても分散の下振れでやられてしまうこともあります。
だから、まずはポーカー以外でお金を稼いでください。ポーカーに限った話ではないですが、成功するためには勉強することに慣れてほしい。大学に進み、就職してちゃんとバンクロール(手持ち資金、財源)ができてから試合に臨める状況をつくる。お金があることでメンタルも安定します。
北野:運が良い悪いという差は、人によってあると思いますか?
岡本:オカルトめいてしまいますが「幸せそうな人は運がいい」と感じています。運が良いと思っているとメンタルが安定するから、良いプレイができる。そうなると結果も当然ついてくるので、さらに運が良いと思える。
この好循環ができればすごく強い。私自身も今、この好循環に入っていると思います。

岡本詩菜◎1989年、埼玉県生まれ。2012年京都大学工学部建築学科を卒業後、10年間の外資系投資銀行勤務を経て、ポーカープレイヤーとして独り立ちする。2023年に米ラスベガスで開催されたポーカー世界大会WSOP(ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー)Ladies Championshipで準優勝。24年の同大会で優勝を果たし、賞金17万1732 USドル(約2600万円)とゴールドブレスレットを獲得。JOPT(ジャパンオープンポーカーツアー)オフィシャルパートナー。