さらにその先については、どうだろうか。
バーンズによると、自身の研究チームはNASAの革新的先進概念(NIAC)プログラムから資金助成を受け、月の裏側に設置する究極の宇宙論望遠鏡「FarView」を設計している。FarViewは、10万本の双極子アンテナで構成されるという。
この構想では、米ヒューストンにある民間企業Lunar Resourcesと提携し、月のレゴリス(表土)から電気分解でアルミニウムを抽出する。このアルミニウムを利用すれば、双極子アンテナ干渉計の建造が可能になる。
バーンズによると、これにより、本来なら高い費用をかけて月まで運ばなければならない何トンもの物資を節約できる。この構想によって先進的な製造技術の実証と、月面で初の分散型科学施設の運用が可能になるという。現時点ではNIACによる資金提供のフェーズ2の段階にあり、今後はフェーズ3の研究に申し込み、月に干渉計のプロトタイプを建造する予定だと、バーンズは説明した。
バーンズによると、FarView計画では、観測施設のための月の裏側の候補地をすでに10カ所以上選定している。バーンズは今月末にNASAとミーティングを持ち、計画のプロトタイプの可能性について話し合うという。

生命生存可能な惑星の電波によるユニークな探査
バーンズによると、月の裏側からの低周波電波観測は、潜在的に生命生存可能な惑星に関連する磁場のユニークな探査と検出を可能にする。太陽系外惑星の主星を起源とする高エネルギー宇宙線がこの磁場に捕捉されると、低周波の電波を放射する。この偏光した電波放射を、バーンズのチームが設計を進めている月の裏側の電波望遠鏡(干渉計)で検出できる可能性があるという。
宇宙の暗黒時代を探査する
ヒバートによると、宇宙の夜明けの直前にあたる暗黒時代には、宇宙はほぼ中性水素ガスとダークマター(暗黒物質)で満たされていたと考えられている。この信号を測定できれば、ダークマターを理解し、その特性を明らかにすることが可能になるかもしれないと、ヒバートは指摘する。
従って、中性水素の宇宙論的21cm線信号の研究が、月の裏側の電波望遠鏡を後押しする主な科学的要因の1つになるという。これは実際に、宇宙の始まりのビッグバンから約1億年後の、恒星や銀河などの光を発する天体が形成される以前の宇宙を対象とする、知られている唯一の探査方法だと、ヒバートは説明している。
まとめ
このような観測を行うことで、恒星や銀河からのフィードバックによって生じる複雑化要因に影響されない宇宙の特異な時代における物理学や宇宙論の標準モデルを検証することが可能になると、ヒバートは述べている。