「逆算された計算式」「経済的合理性なし」
経済ジャーナリストのジェームズ・スロウィッキーはXへの投稿で、この関税率を「フェイク」と一蹴。「もしトランプ政権が、他国が米国に課しているはずの『関税率』を(米国の)貿易赤字を輸入額で割るという計算式で算出していないのだとしたら、どの国の『関税率』も貿易赤字を輸入額で割った数字に等しいというのは、驚くべき偶然だ」と当てこすった。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のトーマス・サンプソン准教授は「この計算式は、米国が貿易赤字を抱えている相手国に関税を課すことを正当化するために逆算されたものだ。このようなやり方に経済的な合理性はなく、世界経済に大きな損失を与える」と非難した。
一部の政策アナリストは、ホワイトハウスが貿易相手国との交渉の出発点として、各国の対米貿易障壁の実際のコストを計算する手間を惜しんで性急に関税率を算出したのではないかと指摘している。野村グループのグローバル・マクロ・リサーチ責任者を務めるロブ・サバラマンは「私が言えるのは、関税の数字をめぐるこの不透明さは、取引を行う上でそれなりの柔軟性をもたらすかもしれないが、それは米国の信頼性を犠牲にする可能性があるということだ」とCNBCに語った。
トランプの発表した関税は、ナンセンスだと広く非難されている。最たるものが、オーストラリア領の無人島であるハード島とマクドナルド諸島への10%の関税だ。本土から遠く離れ、人口は0人で、もちろん米国に商品を輸出などしていない。
一方、ロシア、カナダ、メキシコは今回の関税発表では対象から外れた。トランプはすでにカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、その後延期しているため、今回除外されたのはそれほど驚きではない。
ロシアが除外された理由についてキャロライン・レビット米大統領報道官は、米国がこれまでに科した制裁措置が「意味のある貿易を妨げている」ためだとニュースサイトのアクシオスに説明した。ただ、米国の対ロシア貿易は依然として、今回関税が課された一部の離島や領土よりも多いとアクシオスは指摘している。レビット報道官は、キューバ、ベラルーシ、北朝鮮についても、すでに制裁と関税の対象となっているため相互関税の対象とはならないと述べた。
ホワイトハウスのファクトシート(概況報告書)によると、トランプが2日に発表した10%のベースライン関税は5日に発効し、その他の相互関税は9日に発効する。以前発表した輸入車に対する25%の関税は3日に発効した。一部の国では、トランプがかねて示唆していた一律20%よりも大幅に関税率が高くなっており、たとえば中国は、すでに課された20%の関税に加えて、さらに34%の「相互関税」が上乗せされた。これらの発表を受けて3日の米株式市場は急落して寄り付き、ダウ工業株30種平均は3.5%、S&P500種は3.9%、ナスダックは4.9%下落した。