米国が欧州の防衛にもはや寄与しない世界を見越して、スウェーデンは国防費を増額するとともに、ウクライナへの軍事支援を拡大する方針だ。
相当の増額になる。今後6年間で数百億ドルの追加支出を行い、ロケット砲、衛星測位システム、防空システムなど、欧州の安全保障のために米国の支援を当てにできないさまざまな軍備増強に充てる。
「防衛力の強化、ハイブリッドな脅威への対策、ウクライナ支援の強化に対して投資する」ことが、スウェーデン政府が3月26日に発表した国防支出増額の目的だ。ウルフ・クリステション首相は「ロシアのウクライナ侵略は、スウェーデンと欧州の安全保障にとって重大な問題だ」と説明した。
3年余に及ぶロシアの対ウクライナ戦争は、スウェーデンに北大西洋条約機構(NATO)加盟を決意させた。トルコの反対で申請期間が長期化したものの、昨年加盟を果たしている。スウェーデンはまた、前政権時代に国防費を国内総生産(GDP)の2%未満から2%強に引き上げることを余儀なくされてもいる。
クリステション首相の計画が実行されれば、スウェーデンの国防支出は2030年までにGDP比3.5%に引き上げられる。つまり、10年間で国防予算が約3倍に拡大するのだ。大規模な増額である。ウクライナには数十億ドルが投入されるだろう。
かつて中立国であり、軍事的にほぼ自立していたスウェーデンは、もともと広範かつ多様な防衛産業を有しており、CV90歩兵戦闘車、グリペン戦闘機、アーチャー自走榴弾砲、最新鋭の潜水艦や水上艦艇を製造している。
一方で、一部の防衛能力については他のNATO諸国と同様、米国に大きく依存している。スウェーデンは長距離防空システムに米国製のパトリオットを採用し、米国が運用するGPS(全地球測位システム)衛星コンステレーションを用いて位置情報を取得し、米宇宙軍が管轄する衛星を利用した大規模ネットワークを活用して戦略上不可欠な情報活動を行っている。
いずれも、ドナルド・トランプ米大統領の政権下では、欧州の同盟国がこれまでどおり利用できるかどうかが疑問視されている。
