ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は27日、同国北西部ムルマンスクで開催された北極圏に関する国際フォーラムで演説し、北極圏の支配を巡る地政学的な競争が激化していると警告した。
その中で、デンマーク自治領グリーンランドの領有に意欲を示す米国のドナルド・トランプ大統領についても言及した。プーチン大統領は、米政府がグリーンランドを併合しようとする動きは、人々を驚かせるかもしれないが、これは単なる「トランプ新政権の法外な主張」と見なすべきではなく、「真剣」な計画だと指摘。米国は100年以上も前からこの考えを推し進めており、第二次世界大戦中にはナチスドイツの占領を防ぐため、グリーンランドに軍隊を派遣したこともあったと述べた。これを踏まえ、トランプ政権によるグリーンランド併合に向けた動きは「歴史に深く根ざした」ものだとの考えを示した。
トランプ大統領は1月に就任して以降、国内外の安全保障を理由とし、グリーンランドを領有する意向をたびたび示してきた。同大統領は3月初めの議会演説で、デンマークの自治領であるグリーンランドの独立運動への支持を表明。同島の住民に対し、「あなたがたが望むなら、アメリカ合衆国が喜んで受け入れる」と語りかけた。
トランプ大統領は3月中旬、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長と会談した際にも、安全保障上の理由からグリーンランドが必要だと述べた。これに対し、ルッテ事務総長は「それは今回の協議の枠外に置いておきたい」と応じた。トランプ大統領は記者会見で、グリーンランドには「かなりの数の兵士が駐留している。今後さらに多くの兵士が派遣されることになるかもしれない」と述べ、同島を併合するために武力を行使する用意があることを示唆した。
米国のJ・D・バンス副大統領とウシャ夫人は28日、政府代表団を率いてグリーンランド北西部ピトゥフィクにある米軍基地を訪問し、物議を醸している。グリーンランドのミュート・エゲデ首相は、米副大統領夫妻の訪問は「明らかな挑発行為」だと非難。訪問の唯一の目的は「われわれに力を見せつけること」だと指摘した。この訪問は当初、4日間の予定で、米ホワイトハウスの国家安全保障担当マイク・ウォルツ大統領補佐官とエネルギー省のクリス・ライト長官のみが副大統領夫妻に随行する予定だった。だが、相手国側から招かれてもいないのに訪問することは外交儀礼に違反するため、今回は米軍基地への日帰り訪問に限定された。