米国人は信頼できない
トランプ政権は一時、ウクライナへの援助と情報支援を停止した。これはロシアの利害と一致する動きだ。また、トランプ大統領は同じNATO加盟国であるカナダを51番目の州として米国に併合するという奇妙な主張を展開し、カナダとの貿易戦争を開始。同じくNATO加盟国であるデンマーク領グリーンランドについても領有に意欲を燃やし、強硬手段に出る可能性をもにおわせている。
ドイツの次期首相就任が確実視されるフリードリヒ・メルツは、権威主義に向かう米国の長期的な影響をいち早く理解した欧州指導者の一人だ。2月には、欧州は米国からの「戦略的独立」を達成しなければならない、と述べている。ドイツ連邦議会は、国防費の大幅な増額を可能にする資金調達の仕組みを確立するため迅速に動いた。そして今、スウェーデンがこれに追随している。
優先事項の一つは、スウェーデン軍を米国の管理するGPS誘導システムから切り離すことだ。そのための一手として、欧州連合(EU)が構築した全球測位衛星システム(GNSS)であるガリレオへの支出を増やす必要がある。
もう一つの優先事項は、NATOが米軍の高機動ロケット砲システム(HIMARS)を当てにできなくなった今、より強力なロケット砲兵部隊を整備することである。
パトリオット地対空ミサイルの代替システムを探すのは、スウェーデンにとって最も困難な課題かもしれない。「それが最優先事項だと考えている」と、スウェーデン国防大学の軍事専門家オスカー・ヨンソンは英字紙スウェーデン・ヘラルドに語っている。しかし、射程約145キロのパトリオットに代わるミサイルは、イタリアとフランスが共同開発したSAMP/Tしかなく、製造元の防衛機器大手MBDAの生産数は年間わずか数基にとどまる。
スウェーデン政府が本気で自国とNATOの対米軍事依存に終止符を打つつもりなら、SAMP/Tプログラムに参加し、規模拡大を図るべきだろう。その打診があることを期待したい。