トランプ政権が多くの国に仕かけた関税戦争と強硬発言により、外国人観光客が米国から遠ざかっている実態が旅行関連のさまざまなデータで示されている。
英経済コンサル会社オックスフォード・エコノミクス傘下で、観光分野の統計を扱うツーリズム・エコノミクスのアダム・サックス社長は、トランプ大統領の関税や帝国主義的な発言、そして合法的な観光ビザやグリーンカード(永住権)を持つ外国人が米移民当局に拘束されているというニュースが「米国の旅行業界にとって大きな障害」となっており、「2025年の米国のインバウンド客数は数年前の水準に戻る」とフォーブスに語った。
ツーリズム・エコノミクスは2025年に米国を訪れる旅行者数について、昨年末時点で前年比9%増を見込んでいたが、同5%減に修正している。「だが事態はまだ展開中であり、さらに悪化する可能性もあると認識している」とサックスは述べている。
ツーリズム・エコノミクスは、米国の今年の旅行支出額(国内外からの旅行者の支出の合計)は昨年12月時点の予測より3.7%少なく、米経済にとって推定640億ドル(約9兆6300億円)の損失になると予想している。
カナダとメキシコからの旅行者は米経済にとって特に重要で、2024年には両国から3600万人が米国を訪れた。この数は米国へのインバウンド客のほぼ半分にあたる。
航空データプロバイダーOAGの3月26日の発表によると、カナダから米国に向かう航空便の4〜9月の予約は前年同期比で70%超減少している。
米旅行産業協会(USTA)は2月初旬に、カナダからの旅行者数が10%減少するだけで米国の旅行業界の収入が21億ドル(約3160億円)減少し、14万人の雇用が脅かされると懸念を示した。その後発表されたカナダ統計局の2月の速報値では、カナダから自動車で米国を訪問した旅行者数は前年同月比23%減だった。