移動の再定義と、意味をもたらす都市の選定
SXSWでの実証を経て、井口氏は移動そのものの再定義にも思考を深めている。これまでの「場所を移動する」から、「意味のある体験へと繋がる移動」へ──その進化は、ライフスタイルや働き方にも波及していくと語る。
井口:「今後10年で、移動は単なる移動距離の最適化ではなく、「意味のある体験への接続」へと変わっていくと思います。『なぜ、そこへ行くのか?』『その体験で、自分はどう変わるのか?』といった”問い”に基づく移動が、暮らし方や働き方に深く影響するようになる。
たとえば都市を旅することが、自分の価値観を更新する学びやリセットの機会になっていく。移動はインフラではなく、個人の世界観を拡張するためのインターフェースになっていく。そういう変化が訪れると考えています」
その考えの先にあるのが、「timespace」が真に活きる都市の条件だ。井口氏はそのプロトタイプとして、特定の都市を挙げている。
井口:「『京都』と『オースティン』、この二つはまさにtimespaceが力を発揮できる都市です。京都は、何層にも折り重なった時間と文化が息づく場所で、一本裏通りに入るだけで時空が揺らぐような体験ができる。一方、オースティンは音楽、アート、テクノロジーが共存する創造的な都市。『都市の中に偶発性や物語がある街』は、timespaceの価値を最大限に引き出せると感じました。
そして、今後注目しているのがリスボン、ポートランド、サンフランシスコ、ニューヨーク(ブルックリン)といった都市です」
これらの街には共通する特徴があるという。
井口:「都市のクライテリアを整理すると、以下のようなプロトタイプが見えてきました。
リスボン – Cultural Walk https://d0kid0ki.com/timespace/lisbon_cultural_walk.html
ポートランド – Urban Stroll https://d0kid0ki.com/timespace/portland_stroll.html
サンフランシスコ – Cultural Explorer https://d0kid0ki.com/timespace/san_francisco_cultural_explorer.html
ニューヨーク(ブルックリン) – Cultural Explore https://d0kid0ki.com/timespace/brooklyn_cultural_explorer.html
感性・歴史・文化・テクノロジーが融合している都市にこそ、timespaceは『移動の意味化』を提案していくべきだと思っています。移動とは、単に場所を変えることではなく、世界と自分の関係性を再編集する行為になり得る。都市は、その変容を受け入れてくれる器であるべきだと思うんです」