幼なじみ2人が、高校在学中に起業
ハリスとデジョージにとって、ヨガはもともと健康を意識した趣味だった。2人はカリフォルニア州ロスガトスで一緒に育ち、高校の最終学年に地元の企業向けのTシャツ制作を始めた。彼らはその後、アパレル向けのスクリーン印刷会社を立ち上げ、高校卒業後にColor Image Apparelを設立。主にTシャツやタンクトップの大量生産に乗り出した。現在、彼らのブランドの一つであるBella + Canvas(ベラ キャンバス)は、米国最大級のTシャツメーカーの一つとなっている。
11歳のときに腰の手術を受けたデジョージは、その約10年後にヨガを始め、まもなくハリスも加わった。しかし2人がAlo Yogaのブランドを立ち上げたのは2007年になってからのことだ。彼らの当初のミッションは、ヨガとヨガ的なライフスタイルへの愛を世界中に広めることだった。「最高の製品をデザインすることで、人々がヨガに興味をもつようにしたかった」とハリスは、創業当初の動画で語っている。その理念に基づき、ロサンゼルスの本社では社員向けに毎日のヨガクラスを設けている。
Aloのブランド名の由来がAir(空気)とLand(大地)、そしてOcean(海)の3つの単語の頭文字の組み合わせだと述べている創業者たちは、環境への配慮を会社の価値観の中心に据えている。Aloのウェブサイトには「100%搾取なし」と明記されており、同社の工場は労働環境を評価する非営利団体WRAP(世界的責任ある認証生産)の最高レベルの認証を取得している。さらに、同社の本社は太陽光発電で稼働し、倉庫ではペーパーレスのオペレーションを行っている。
Aloは近年、実店舗においても独自の戦略で差別化を図っている。同社の一部の店舗では、2階部分に「サンクチュアリ」と呼ばれるヨガスタジオを設けており、ピラティスやストレッチなどのクラスを1回32ドル(約4700円)の受講料で提供している。また、地域コミュニティとの交流を目的として、ランニングクラブやピックルボール大会などのウェルネスイベントを複数の都市で開催している。
成功の鍵は「高級路線」
このブランドは今や、ヨガウェアの枠を大きく超えて展開している。昨年12月にAloは少量生産のラグジュアリーライン、Alo Atelier(アロ・アトリエ)を発表した。ここにはシルクのパジャマやカシミアのセーター、ウールのコートなどが含まれている。
モーニングスターのリテールアナリスト、デビッド・シュワルツは、この「ラグジュアリー志向」への転換が、競争の激しい市場におけるAloブランドの成功の鍵になっていると分析する。「ポリエステル製のレギンスをつくっている会社はたくさんあるが、Aloはより高品質なアスレジャーウェアを求める女性たちのニーズを捉えてニッチを確立している。彼らはLululemonと似た商品を扱っているにもかかわらず、よりファッションブランドとして認識されている」とシュワルツは語る。
ハリスとデジョージは、Aloのビジネスが軌道に乗る前から既存のアパレル事業で相当な富を築いていた。2017年にハリスは、ロサンゼルスの8ベッドルームの約2000平方メートルの邸宅を、3000万ドル(約44億円)で購入していた。
しかしAloの成功は、彼らの富をさらなる高みに押し上げており、2人の合計資産額約94億ドル(約1兆3800億円)は、Lululemonの創業者チップ・ウィルソンの推定保有資産の63億ドル(約9300億円)を上回っている。