北米

2025.04.03 10:00

トランプ再選で金融業界が夢見た「M&Aブーム」はなぜ来なかったのか

ドナルド・トランプ米大統領(Win McNamee/Getty Images)

金融セクターの株式は特に打撃を受けた。ブラックストーンやKKR、アポロ、カーライルといった大手のディールメーカーの株価はすべて、3月の上旬までに選挙後の高値から約30%下落した。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの投資銀行の株も、2月の史上最高値から約20%下落している。

フォーブスは、昨年11月下旬にアナリストの推奨をもとに優れた買収ターゲットになり得る18社の候補リストを発表したが、それらの企業の株価は年初から8%下落しており、S&P500のパフォーマンスを下回っている。

「一貫性を欠く」トランプ政権

もっとも今年のドルベースの取引総額は、一部のメガディールのおかげで、昨年からわずかに増加した。年初来の米国で行われたM&Aの累計額は4160億ドル(約62兆円)で、昨年の同時期(年初から3月24日まで)の4070億ドル(約60兆9900億円)からわずかに増加していた。その1例には、コンステレーション・エナジーよる164億ドル(約2兆6000億円)での電力会社カルパインの買収が含まれる。

さらにグーグルは、3月18日にサイバーセキュリティ企業Wizを、同社史上最大の320億ドル(約4兆8000億円)で買収することに合意した。このディールは、バイデン前政権下の2024年に一度断念した案件だが、両社はトランプ政権のもとで規制当局の承認が得られると見込んで再び交渉したと報じられた。

ただし、関係者が期待したほどには、トランプ政権の規制当局はビジネス寄りではないかもしれない。保守派から批判を受けていたリナ・カーンに代わって連邦取引委員会(FTC)の委員長に就任したアンドリュー・ファーガソンは、2月にトランプ政権はバイデン政権下の司法省が2023年に策定した「反トラストのガイドラインを引き続き順守する」と発言した。これは、トランプが企業寄りというよりポピュリズムに傾いている可能性を示すサインかもしれない。ただし、彼の姿勢には一貫性がなく、先日はFTCに残っていた2人の民主党系の委員を解任したばかりだ。

また、先日The Capitol Forumが報じたところによると、司法省は米銀キャピタル・ワンによるクレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャルの350億ドル(約5兆3000億円)の買収案について、競争上の懸念を抱いているという。ただし、両社は5月までの取引の完了を目指している。

「バイデン前政権下では、消費者に少しでも影響が及ぶ可能性があるディールは強くけん制されていた。だから銀行の合併は事実上、申請段階で潰されていた」と、投資銀行フーリハン・ローキーのラリー・デアンジェロは指摘した。

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編集=上田裕資

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