テクノロジー

2025.04.03 08:00

Napster共同創業者の「がん治療研究所」、バイオテク分野の投資を活発化

ショーン・パーカー(Photo by Brian Ach/Getty Images for TIME 100 Health Summit )

ショーン・パーカー(Photo by Brian Ach/Getty Images for TIME 100 Health Summit )

トランプ政権が行った数ある予算削減の中でも、特に議論を呼ぶものの1つが、医療研究に対する支援の削減だ。この措置により、がんからパーキンソン病に至るまで、あらゆる病気の新薬開発を続ける科学者たちの取り組みが脅かされている。

そんな中、1999年に音楽ファイルの共有サービスであるNapster(ナップスター)を共同創業し、フェイスブックの初代CEOを務めたビリオネアのショーン・パーカー(45)は近年、医療研究への連邦支出を増やすためのロビー活動に積極的に関与してきたとフォーブスに語った。

彼は今、自身が約10年前に2億5000万ドル(約370億円)を投じて設立したがん関連の事業体、パーカーがん免疫療法研究所(PICI)の役割を拡大させようとしている。この団体は、がん研究に資金を提供するだけでなく、バイオテクノロジー企業への出資も行っている。

PICIは、これまでに約3億ドル(約500億円)を主にがんの免疫療法のプロジェクトに投じ、4000本を超える論文と300件を超える特許を生み出している。また、これらの取り組みからは、17社のバイオテクノロジー企業が設立されており、累計40億ドル(約6000億円)以上のベンチャーキャピタルの資金を調達した。

パーカーは、これらのプロジェクトの拡大に向けて、米国がん協会の元CEOであるカレン・クヌーセンをPICIの新CEOに任命すると発表した。分子生物学の博士号を持つがん研究者で、シドニー・キンメルがんセンターの前立腺がんプログラムを創設したクヌーセンは今後、スタンフォード大学やペンシルベニア大学、UCLAなどの複数の大学やがんセンターとの提携や、バイオテクノロジー企業への出資を監督する。

これまでにPICIが支援してきたスタートアップの1つには、先日のシリーズCラウンドで3億2500万ドル(約487億円)を調達し、評価額が18億5000万ドル(約2770億円)に達したとされるArsenal Bio(アーセナルバイオ)が挙げられる。同社は現在、腎臓がんや卵巣がんに対する細胞治療の臨床試験を実施中で、年内には前立腺がんの試験も開始する予定だ。

また、もう1つの出資先であるGeorgiamune(ジョージアミューン)は、2023年8月のシリーズAで7500万ドル(約112億円)を調達して以降に、進行性転移がんの治療薬に関する臨床試験を始めている。

バイオテクの新興を支援

パーカーは、「スタートアップとの取り組みはまさに今、重要性が増している」と述べている。というのも、バイオテクノロジー分野への投資家の関心が低下する中で、この分野の新興企業への投資が激減したからだという。彼によると、現在行われている投資のほとんどは、すでに製品開発がかなり進んでいるレイトステージの企業に向けられている。

パーカーとクヌーセンはともに、自分たちの団体が公的資金の代わりにはなれないと強調する一方で、政府や投資家がリスクを避ける傾向を強める中で、彼らがより大胆なプロジェクトを支援することで、この分野の取り組みを前進させられると考えている。

「こうした厳しい状況の時にこそ、我々のファンドは力を発揮すべきだと考えている。今の活動を続け、さらに力を入れていきたい」とパーカーは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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