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海外

2025.03.15 08:00

ニューラリンクを超える「脳コンピュータ」を生んだ米新興Cognixionの実力

フランス・パリで開催された Viva Technology showに展示されたCognixion ONE Axon-Rヘッドセット・2024年5月24日(Photo by Chesnot/Getty Images)

フランス・パリで開催された Viva Technology showに展示されたCognixion ONE Axon-Rヘッドセット・2024年5月24日(Photo by Chesnot/Getty Images)

筋力の低下と麻痺を引き起こす筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者は、米国内に約3万人いるとされ、毎年約5000人が新たに診断されている。2013年に別名「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれるこの病気を診断されたラビ・イッツィ・ハーウィッツは、その後の約10年間、目の動きで文字を綴るツールを用いて人々とコミュニケーションをとってきた。

ALS患者を支援するツールは、これまでほとんどなかったが、ここ数年で新たなテクノロジーが登場しつつある。そのひとつが、Cognixion(コグニクション)と呼ばれるスタートアップが開発した、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)と呼ばれる技術を活用したデバイスだ。

BCIは、体が麻痺した患者がコンピューターを操作して、コミュニケーションを取ることを支援するテクノロジーで、イーロン・マスクのNeuralink(ニューラリンク)は、患者の頭蓋骨への埋め込み手術を通じて、この技術を利用可能にしている。

しかし、カリフォルニア州サンタバーバラを拠点とするCognixionが開発したBCIデバイスは、Neuralinkのシステムのように、頭蓋骨への外科的な手術を必要としない。同社は3月12日、10人のALS患者が参加する最初の臨床試験を開始したと発表した。ハーウィッツもそこに含まれており、すでに週3回のトレーニングを受けている。

ハーウィッツの介護者は、Cognixionのデバイスが「非常に有望に思える」とフォーブスに語った。「彼が最初にこのデバイスのキーボードを開き、自分の力で何かを伝えることができたのを見て、とても驚いた」とその人物は述べている。

Cognixionは、アマゾンのAlexa Fund(アレクサファンド)や超音速旅客機への投資で知られるPrime Movers Lab(プライム・ムーバーズ・ラボ)などの投資家から2500万ドル(約37億円)を調達し、「Axon-R」と呼ばれるBCIデバイスを開発している。

Axon-Rは、脳波を記録するEEG(脳波計)と眼球の動きを追跡する機能を備えたヘルメット型のデバイスで、拡張現実(AR)ディスプレイを備えている。ユーザーはこのデバイスを使って「タイピング」した言葉を、スピーカーから声として送り出せる。

また、このデバイスには生成AIモデルが搭載されており、時間が経つにつれて患者の話し方のパターンを学習し、より迅速なコミュニケーションを実現する。さらに、Axon-Rは外部のアプリ開発者向けにAPIを公開しており、「現状で10社以上の開発者が参加している」とCognixionのCEOを務めるアンドレアス・フォースランドは述べている。

同社は、この臨床試験で患者がAxon-Rをどのように活用できるかを評価し、その進捗を追跡するとともに、BCIを最適化する方法を探るとしている。この試験の一部は、ALS患者向けの新しい治療法の開発を支援する非営利団体、ALS協会の関連組織であるALS Accelから支援を受けている。

次ページ > BCI市場は800億ドル規模に成長

編集=上田裕資

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