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モビリティ

2025.04.02 08:00

「テスラの苦境」はさらに悪化、バッテリー技術でもBYDに敗退

Photo by Justin Sullivan/Getty Images

米国でも「一人負け」のテスラ

テスラは米国本土でも苦戦している。S&Pグローバルによると1月の米国におけるEV販売は、トランプ政権による7500ドル(約113万円)の連邦税控除の撤廃前の駆け込み需要で14%増加したが、テスラの販売は11%減少した。これは、同社の米国販売の3分の1以上を占めるカリフォルニア州での大幅な落ち込みが主な要因だ。

S&Pグローバルの調査によれば、左派寄りのカリフォルニア州における現代自動車や起亜、ゼネラルモーターズ(GM)などの1月のEV販売が平均24%増加したのに対し、テスラは31%急落していた。この急落は、マスクのDOGEの業務に対する反発や、それに伴う米国内や欧州のテスラの店舗への大規模な抗議活動が起きる前に起きていた。

新たな販売データは4月まで公表されないが、良い内容にはならない見通しだ。「テスラの販売は第1四半期に打撃を受けるだろう」と、カリフォルニア州のコンサルタント企業オートパシフィックの社長兼チーフアナリストのエド・キムは語った。

株式アナリストもマスクやブランドへの怒りから、テスラの販売予測を引き下げており、2年連続の販売台数の減少を予想している。「自動車業界の歴史において、これほど短い期間で大規模にブランド価値を毀損させた例を思い出すのは難しい」と、JPモルガンのアナリストのライアン・ブリンクマンは最近の調査メモで述べていた。彼は、テスラの今年の年間納車予測を、昨年の178万9000台から177万5000台に引き下げた。

コックス・オートモーティブによれば、今年の米国全体のEV販売は12%増加すると見込まれているが、テスラのブランドに対する購買者の関心は、前年比で7%下がっており、これはすべてのプレミアムブランドの中で最大の下げ幅となっている。

魅力的な新製品が不足していることも問題だ。最新モデルのサイバートラックは、鋭角的なデザインを特徴としているが、反マスク派による破壊行為の標的になったこともあって販売は低迷しており、昨年の販売台数はおよそ4万台にとどまった。この車両は品質面でも非常に悪い記録を残しており、今月にはステンレス製のボディパネルが脱落するおそれがあるとして、リコールの対象となっている。

「AI企業への転換」にも苦戦の兆候

マスクは、テスラの苦境を認識したためか、ここ2年ほどで自社をAIとロボティクスの企業に転換する計画を強調している。現在の収益の約9割はバッテリーパックとEVの販売によるものだが、彼はAIやロボタクシー、ヒューマノイド(人型ロボット)によって利益を数兆ドル規模に拡大できると主張している。マスクは「これらの分野への投資は将来、計り知れないほどの果実をもたらすだろう。それは理解するのが困難なほどの規模だ」と、1月の決算説明会で語っていた。

しかし、これらの分野でも、テスラは不利な立場にある。アルファベット傘下のウェイモは、ロボタクシー事業においてテスラをはるかに引き離しており、テスラが路上に出ている数百万台の車両に搭載されたカメラから膨大なデータを収集していることが、AI面での優位につながっているとは言い難い。

テスラのイベントでたびたび登場する人型ロボットのオプティマスも、過去に登場したボストン・ダイナミクスのロボットや、階段を上り、サッカーをし、ボトルを開けて飲み物を提供できたホンダ製ロボットのアシモにすら及ばない機能しかまだ示せていない(ホンダはアシモを2022年に引退させた)。

マスクがテスラに与えたダメージは、まだ始まったばかりだ。

「皮肉なことに、地球環境にとって最も重要な企業が、今やイーロンのせいで世間から爪弾きにされている。正気とは思えない」と、カリフォルニア州サンタモニカ在住のロス・ガーバーは語った。「最悪なのは、中国では誰もテスラを取り巻く政治の状況に関心がないということだ。中国で販売が落ちているのは、純粋に競争の結果だ」と彼は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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