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2025.03.28 11:30

売上高でテスラを抜いた中国BYD、創業者の資産は今年「1.4兆円増加」

Shutterstock.com

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中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)の創業者でCEOの王伝福(58)は、同社の世界売上高が初めてイーロン・マスク率いるテスラを上回る中で、今年に入り保有資産を93億ドル(約1兆4000億円)増加させている。

BYDは中国においてテスラに対するリードを広げているが、王の掲げる世界的な野望を実現する上でいくつかの試練に直面している。現在の保有資産が約285億ドル(約4兆3000億円)の王は、中国で8番目の富豪となっている。香港と深センに二重上場するBYDの株価は、年初からそれぞれ57.5%と43%上昇している。

アナリストによれば、BYDは世界最大の新エネルギー車(NEV)市場である中国において、今後も首位の座を維持する見通しで、一方のテスラは、市場シェアを失い続ける可能性があるという。3月24日に発表された2024年決算によると、BYDは昨年、世界で427万台の車両を販売し、売上高は前年比29%増の7770億元(約16兆円)となり、テスラの977億ドル(約14兆7000億円)を上回った。純利益は前年同期比34.3%増の403億元(約8089億円)だった。

テスラがピュアEVのみを製造しているのに対し、BYDはプラグインハイブリッド車も手がけている。香港を拠点とするモーニングスターのアナリスト、ヴィンセント・サンによれば、BYDは幅広い製品ラインナップと競争力のある価格設定で顧客層を広げている。

BYDは勢いを維持するために、さらなるハイテク機能を追加しており、2月には、1万ドル(約150万円)以下の価格帯のモデルに自動運転機能を搭載すると発表。3月には、新型セダンの「漢L」とSUVの「唐L」に5分間で航続距離400キロメートル分を充電できるバッテリー充電システムを発表した。

上海のコンサルティング会社オートモーティブ・フォーサイトのヤール・チャンによれば、これらのイノベーションは、何年も製品ラインの大幅な更新を行っていないテスラとは対照的だという。特に、BYDの自動運転分野における技術の進展は、中国の消費者に対し、追加の費用を払ってまでテスラを選ぶ必要があるのかという疑問を抱かせているとチャンは指摘した。

中国のSNSでは、テスラの車両が信号を認識しなかったり、車線変更がうまくできなかったりするといった、多くの苦情が寄せられている。

テスラの中国市場でのシェアは、2024年に7.6%だったが、今年の年末には5%にまで落ち込む可能性があるとチャンは見ている。米ナスダックに上場するテスラの株価は、主要市場での販売減やマスクの政治的関与がますます物議を醸すなかで、年初来で約30%下落した。しかし、フォーブスの推計によれば、マスクの資産はいまだに3477億ドル(約52兆4000億円)にも及んでいる。

中国市場の3分の1を握る

一方、複数のアナリストによるとBYDは、年末までに中国で販売されるEVの約3分の1を占めるようになる見通しだ。同社の創業者の王は、2025年に550万台の納車を目指しており、そのうち約100万台を海外市場で販売したいと25日のアナリスト向け説明会で語った。

香港の調査会社ブルーロータス・キャピタルのエリック・ウェンはより強気で、BYDが今年578万台を納車し、中国国内で36%の市場シェアを獲得すると見込んでいる。

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編集=上田裕資

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