米電気自動車(EV)メーカー、テスラの売上高はすべての主要市場で急落しているが、同社の中国のライバル企業は急成長を遂げている。しかし、テスラの問題はまだ始まったばかりだ。
テスラは苦境に直面している。同社のEV販売台数は、米国の主要市場であるカリフォルニア州で1月に前年同月比で31%も減少した。欧州市場はさらに悪く、年初の2カ月間の販売が43%も落ち込んだ。そして、収益面で最も重要な市場である中国では、2月までの販売が29%急落した。 テスラの株価は、3月27日までの時点で年初から34%下落している。同社を率いるイーロン・マスクへの反発も強まり、テスラの店舗では抗議活動が起き、車両が放火される事件も相次いでいる。しかし、事態はさらに悪化しようとしている。
販売の低迷は、競合他社が躍進する中でテスラの財務基盤が根本的に揺らいでいることを示しているが、最も深刻なのは、中国でテスラに起きている事態だ。2019年に開設された同社の上海工場は、中国における初の外資100%出資の自動車工場であり、テスラにとっても大きな転換点だった。
この工場により同社は、低コストの中国の労働力や部品、物流を背景に、販売を急増させて一貫して黒字を維持するようになった。しかし、今年に入ってから販売が減少に転じた中国市場は、すでに縮小しつつある同社の利益率をさらに圧迫する可能性がある。テスラの販売が鈍化している大きな理由の1つは、BYDなどの中国のEVメーカーが、あらゆる面でテスラを上回り始めていることだ。
「中国政府がテスラに外資100%の工場を認めたことの裏側には、隠された意図があった。彼らの狙いはテクノロジーとノウハウ、そして経験を取り込むことだった」と、テスラの株主でロサンゼルスの資産運用会社ガーバー・カワサキを率いるロス・ガーバーCEOは語った。「まさにそれが今、現実になっている。今の中国車は本当に競争力があり、テクノロジーも優れていて、しかも価格が安い」

昨年、中国で最も売れたEVはテスラのモデルYだったが、中国最大の自動車メーカーであるBYDは、1万ドル(約150万円)の小型EV「海鴎(シーガル)」や1万6000ドル(約240万円)のコンパクトSUV「元Plus(ユアン・プラス)」などの複数のモデルを組み合わせて、合計ではテスラをはるかに上回る販売台数を達成した。同社の低価格戦略は、ラテンアメリカやオーストラリア、欧州などでの販売の拡大にも寄与している(BYDの乗用車は現在、米国には進出できていない)。