サイエンス

2025.04.10 18:00

恐竜もカエルも呑み込んだ「死の落とし穴」、350万個の化石が発見される

ラ・ブレア・タールピット(Getty Images)

2. 中国の「石樹溝累層」:ジュラ紀の流砂

グアンロン・ウーカイ(五彩冠龍:Guanlong wucaii)
グアンロン・ウーカイ(五彩冠龍、Guanlong wucaii)(Zhongda Zhang/IVPP via Getty Images)

ラ・ブレア・タールピットは氷河期のマンモスの墓場だが、中国の石樹溝累層(Shishugou Formation)は、恐竜たちの集団墓地だ。新疆ウイグル地区にあるこの化石産出地の歴史は、1億6000万年前のジュラ紀にさかのぼる──恐竜が繁栄していた時代だ。

しかし石樹溝では、多くの恐竜たちがまずい状況になった。

石樹溝に埋まる化石群は、独特でぞっとする物語を伝えている。この場所では、恐竜たちの骨格が垂直に積み重なっており、多くは折り重なるようにして埋まっている。

科学者の見解によれば、この落とし穴ができたのは巨大な恐竜(おそらくは竜脚類)が水を吸った地面を踏み歩き、その領域を先史時代の死の罠に変えたからだという。その泥に小型の恐竜などの生き物がはまり、脱け出せなくなったのだ。

この穴の犠牲者のなかでも特に多いのが、全長1.7m程度のダチョウに似たリムサウルス・イネクストリカビリス(Limusaurus inextricabilis)だ。この奇妙な獣脚類の恐竜は、くちばしをもち、成熟するにつれて歯を失う。『PALAIOS』誌で2010年1月に発表された研究によれば、この恐竜たちが泥の中でもがき、互いに積み重なるようにして深く沈んでいったことが化石からうかがえるという。

石樹溝で見つかった化石の中でも、重要な発見として際立っているのが、獣脚類のグアンロン・ウーカイ(五彩冠龍:Guanlong wucaii)だ。全長3mほどで、頭に特徴的なトサカのあるこの恐竜は、ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)の初期の親戚にあたり、ティラノサウルス類の初期進化を垣間見せている。

また、この場所では、これまでに知られている限りでは屈指の長い首(約15m)を持つ巨大な竜脚類の恐竜マメンチサウルス・シノカナドルム(Mamenchisaurus sinocanadorum)の化石も見つかっている。

この場所の不気味な過去は、それだけにとどまらない。化石化した火山灰の分析により、一部の恐竜の死の原因が突然の火山活動にあった可能性も示唆されている(硬化した泥の中に急速に埋められた可能性だ)。

この墓場はジュラ紀の生態系を垣間見せる比類なき場所であり、ティラノサウルス・レックスが登場する数千万年に、さまざまな種がどのように影響を与えあっていたのか、その全貌を科学者が解き明かす手がかりになっている。

次ページ > 8000匹の骨が発見された生物とは

翻訳=梅田智世/ガリレオ

タグ:

続きを読むには、会員登録(無料)が必要です

無料会員に登録すると、すべての記事が読み放題。
著者フォローなど便利な機能、限定プレゼントのご案内も!

会員の方はログイン

ForbesBrandVoice

人気記事