3. 英国:「大量死した鉄器時代のカエル」の謎
時間を早送りして、2400年前頃の鉄器時代の英国へ行こう。そこでは、また別の奇妙な大量死の事例が見つかる──こちらの例には、カエルが絡んでいる。
イングランドのケンブリッジシャーにある円形住居遺構の近くで発掘作業をしていた考古学者が、1本の溝から8000匹を超えるカエルの骨を掘り出した。紀元前400年頃のこの遺構に、研究者たちは首をひねった。
通常、考古学遺跡で見つかるカエルの骨は少数であるため、この異例の数は謎としか言いようがない。溝そのものは長さ46フィートほど(約15m)で、円形住居遺構の近くに位置することから、この両生類の集積には人間がなんらかの役割を果たした可能性があると思われる。
だが、別のいくつかの先史時代の遺跡で見つかったカエルの骨(切った跡や焼けた痕跡のあるもの)とは異なり、調理したり食べたりしたことを示す証拠は見つかっていない。
発見されたカエルのほとんどは、ヨーロッパアカガエルやヨーロッパヒキガエルといったありふれた種で、現在の英国でも見られるものだ。しかしその膨大な数の骨は、なんらかの惨事が起きてカエルが大量死したことを示唆している。
一つの可能性として考えられるのが、集団移動に伴う災厄だ。繁殖地に向かっていた数千匹のカエルがこの溝に落ち、脱け出せなかったのかもしれない。また別の説では、極端な冬の天候のせいで冬眠中に死んだ可能性があるとされている。カエルは冬眠時に泥のなかにもぐりこむが、寒さが極端に厳しいと死ぬこともあるからだ。
あるいは、そこで加工されていた作物を餌にする昆虫に引き寄せられたとも考えられる。豊富な食物源に引かれて膨大な数が集まったものの、結局は永遠に閉じこめられてしまったのかもしれない。