大学生は「さす九」のことをどう思っているのか。軽い気持ちで使っているので気にすることはないと言う人もいれば、ジョークとは思えないと捉えている人もいる。だが全体に、こうした言葉を使うことへの問題意識は希薄なようだ。
だから「さす九」ってナニ? と苛立つ方も多いだろう。さす九とは「九州は男尊女卑の国であるため、女性差別的な発言に対して、まるで九州の男みたいだ、さすがは九州男児と皮肉る」こと。女性差別を揶揄する言葉として広まりつつあるが、一方で地域差別だと批判する声も多い。はたして大学生はどう感じているのか。

Z世代に特化したクイックリサーチサービス「サークルアップ」は、さす九に関するアンケート調査を行った。対象は、サークルアップのユーザーで、この言葉を知っていると答えた大学1年生から4年生の115人。まずは「さす九」をジョークだと思うかとの問いでは、そう思わないという人が59パーセントだった。理由として「議論されている場を見るとみな本気で話しているから」、「冗談で特定の地域の人を非難する言葉はよくないと思うから」といった意見が聞かれた。

だが、さす九を地域差別だと思うかという問いでは、55パーセントがそう思わないと答えた。理由は「事実を述べているから」、「自分もさす九を実感する経験をした」などだ。

さす九は地域差別だとする指摘を言葉狩りだと思うかとの問いでは、57パーセントの人たちが「そう思わない」と答えた。理由として、「過剰に反応しすぎ」、「冗談だと判断できる」といった意見が見られた。

実際に九州出身の男性の行動に「さす九」だと感じたことはあるかとの問いでは、63パーセントがまったくないと答えた。あると答えた37パーセントの人たちは、どれだけの人数の九州出身者にそれを感じたのかは、この調査ではわからない。もっとも、数を示すまでもなく「さす九 は九州出身者への偏見にもとづく言葉であることに間違いはない。
問題は、言葉そのものよりもむしろ、男女差別を別の差別用語で批判するという独善性にある。この言葉を使う人たちの、自分に関わる差別には我慢ならないが他人の差別には無関心という、差別問題への意識の希薄さには絶望する。世界経済フォーラムが発表した2024年の男女格差を示すジェンダー・ギャプ指数は、日本は先進工業国の中では最下位の118位。こうした深刻な問題を個人的な偏見に矮小化しているようでは改善は見込めない。大学生には、これから多くの経験を通して分別を身につけてもらいたい。