さらに重要なのは、ウクライナがたえず防御を向上させ、ロシアのドローン攻撃に対抗していることだ。新たな音響探知システム「スカイ・フォートレス」、ネットワーク化されたレーダー、その他のセンサーによって、すべてのドローンを探知・追跡している。それを航空機やミサイル、機動射撃部隊の機関砲などで迎撃する体制も整えている。
シャヘドの飛来数に比べるとウクライナの地対空ミサイルの数は少なすぎるが、米国から供与されたレーザー誘導ロケット弾システム「ヴァンパイア」、あるいは迎撃ドローンなど、低コストの新兵器が効果を発揮しつつある。電子戦システムで失わせたものを含めると、シャヘド型ドローンの迎撃率は2月に97%に達している。
Footage of Ukrainian naval forces downing a Russian Shahed-131/136 attack drone over Odesa. pic.twitter.com/WzIh4wHN0l
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) February 11, 2024
ウクライナの防空網は圧迫されているものの、限界点には達していない。
炎上する石油施設
国境の反対側では状況が大きく異なる。
ウクライナが長距離ドローンの製造に着手するのは遅く、「UJ-26ボベル(ビーバー)」のような初期の製品の多くは小規模な民間プロジェクトとして開発された。ロシアでシャヘド、ロシア名「ゲラニ2」が巨大な新工場で量産されているのと対照的だ。
だがその後、ウクライナの取り組みは加速し、その成果物による戦果も増えてきた。ウクライナの長距離ドローンはとりわけ、ロシアの石油生産・貯蔵施設を攻撃目標にしている。石油関連施設は、小型弾頭を搭載したドローン1機の攻撃で爆発・炎上を起こせるソフトターゲットだ。2024年1月までに、こうした攻撃は頻繁に行われるようになった。
現在、ウクライナは、「リューティー(獰猛)」のような航続距離1000kmを超えるドローンを大量に製造している。ウクライナの長距離ドローン生産数は2年前にはせいぜい数百機だったが、ボロディミル・ゼレンスキー大統領は2025年に長距離ドローンなどのディープストライク(縦深打撃)兵器の生産数を3万に引き上げる方針を示している。
ウクライナ国防省情報総局(HUR)は2024年12月、最大2000km離れた目標を攻撃可能なドローンをウクライナが保有していることを明かした。ウクライナのドローンが狙えるロシア国内の施設はさらに増えているということだ。ウクライナは今月、射程1000kmの新型巡航ミサイル「ドウヒー・ネプトゥーン(ロング・ネプチューン)」も公表しており、攻撃の自由度はさらに広がった。