鳥インフルエンザに感染した哺乳類が、また1つ増えた。英国で、羊への感染事例が初報告されたのだ。
感染が確認されたのは英ヨークシャーの農場。定期サーベイランス(感染状況検査)で、高病原性のH5N1型鳥インフルエンザウイルスが雌の羊1匹から検出された。この農場では以前、家禽の鳥インフルエンザ感染が見つかっており、羊への感染の可能性が指摘されていたが、実際に感染が確認されたのは初めて。
感染した羊は殺処分され、この羊と接触があった他の動物からウイルスは検出されなかった。
鳥インフルエンザのヒト感染事例
米疾病対策センター(CDC)によると2024年3月以降、米国では鳥インフルエンザのヒト感染事例が70件確認され、ルイジアナ州で慢性疾患のため入院していた高齢男性1人が死亡している。鳥インフルエンザウイルスは感染コントロールが難しく、これまでに鳥類のほか哺乳類では猫や乳牛への感染が確認されている。今回、それに羊が加わった。
人間が鳥インフルエンザに感染すると、発熱、咳、喉の痛み、鼻水、筋肉痛、疲労感などの症状を発症し、ほとんどは軽症で済む。ただ、まれに重症化することがあり、呼吸困難、肺炎、呼吸器不全を引き起こす。
ヒトへの感染経路はいくつか確認されており、最も一般的なのは、鳥や乳牛など感染動物との直接接触である。また、感染動物の唾液などの体液や糞便を扱った手で口や鼻に触れた場合にも感染するおそれがある。ウイルスを含んだ塵埃(じんあい)を吸い込んで感染することもある。
ヨークシャーの事例の重要性と公衆衛生への影響
新たな動物から鳥インフルエンザウイルスが検出された事実は、ウイルスが適応し、新たな宿主に感染できるようになったことを意味するため、注視に値する。種の壁を超えた感染はこれまでにも発生しているが、羊への感染はなかった。