イングランドの公衆衛生行政を統括する英健康安全保障庁(UKHSA)によれば、今回の感染は孤立した症例であり、人間に対する公衆衛生上の脅威は依然として低い。
しかし、H5N1型ウイルスがより広範な哺乳類種に感染する可能性が示されたことで、将来的な感染拡大のリスクやパンデミックへの懸念が高まっている。今のところ、ヒトからヒトへの持続的な感染は確認されていない。
感染患者の体内で2種類のウイルス株が交錯して遺伝子の組み合わせが変わるとウイルスが変異を獲得し、感染力が強まってヒトヒト感染が起こるおそれがある。現段階ではヒトへのリスクは低いままだ。
米国における鳥インフルエンザの今後
米農務省は先月、鳥インフルエンザ抑制に10億ドル(約1500億円)を投じると発表した。これにはバイオセキュリティー対策の強化、農家への経済的救済、ワクチンや治療法の研究への資金援助などが含まれる。だが、具体的な戦略についてはあいまいな点が多い。たとえば、乳牛や家禽へのワクチン接種を開始するのか、単に抗ウイルス薬を提供するだけなのかは不明である。
しかも保健福祉省(HHS)のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、鳥インフルエンザウイルスが鳥や動物の間で免疫を誘導する可能性があるとして、鳥の群れでの感染拡大を容認することを提唱している。しかし、公衆衛生の専門家は、このアプローチでは鳥インフルエンザの蔓延を緩和することも封じ込めることもできないと警告。感染抑制のため、殺処分とバイオセキュリティー対策の強化を求めている。
人間にとっては、予防が最も重要だ。すなわち、感染した動物との接触を避け、手洗いなどの衛生管理を徹底し、家畜に近づく際には手袋やゴーグルなどの防護具を着用し、汚染された可能性のある表面に触れないようにすることだ。