政治

2025.03.27 09:30

トランプの「EU産ワインに200%関税」で米ワイン産業は崩壊する

晩餐会で乾杯するドナルド・トランプ米大統領。2018年4月24日撮影(Chris Kleponis-Pool/Getty Images)

それだけではない。このような高関税は、ワイン業界の取引関係そのものをひずませる。客をもてなす側は、旧世界ワインと新世界ワイン、お手頃価格の品と高級品、馴染み深いボトルと実験的なボトルなど、バランスを考えてワインリストを作成する。シカゴやチャールストンのソムリエに、彼らが厳選したシャンパンのボトル価格が3倍になったと告げれば、顧客にコストを転嫁するか、ワインリストを縮小するかの2択にならざるを得ない。どちらも持続可能ではない。

ワイン好きの消費者も、ボルドーが値上げされたからといって代わりにソノマワインを買うとは限らない。むしろ買い控えに動き、全体的にワインを飲む量を減らすだろう。それは、米国の生産者を含むすべての関係者に打撃を与える。

現実問題として、米ワイン産業にはすでに大きな負荷がかかっている。若年層消費者のワイン離れが止まらず、内需は軟化。ワインの余剰在庫があふれた結果、米カリフォルニア州でワイン用ブドウが生産過剰となり、一部の生産者はブドウの木を引き抜いて畑を更地に戻している。気候変動により収穫も打撃を受けている。2020年のカリフォルニア州の山火事では、大量のワイン在庫が被害を受けたほか、煙でだめになった無数のブドウも廃棄された。状況は先月の山火事でさらに悪化している。すでに環境問題や世代の逆風にさらされているところに、さらに経済的な混乱を加えるのは、軽率なだけでなく戦略としてばかげている。

過去に学ぶこともできていない。第1次トランプ政権が2019年にアルコール度数14%未満のフランス産、スペイン産、英国産、ドイツ産の非発泡性ワインに25%の関税を課した際、米輸入業者はコスト削減や出荷の完全中止を余儀なくされた。多くの業者は人員を削減し、廃業したところもあった。米ワイン産業は、高関税で生まれた隙間に魔法のように繁栄することはできず、苦しんだのである。それゆえ関税は2021年に撤廃された。

次ページ > 経済的な自殺行為

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

続きを読むには、会員登録(無料)が必要です

無料会員に登録すると、すべての記事が読み放題。
著者フォローなど便利な機能、限定プレゼントのご案内も!

会員の方はログイン

ForbesBrandVoice

人気記事