その勧告を受け、ワインと健康の関連性に対する関心が再び高まっている。ワイン専門雑誌『ワイン・スペクテーター』の編集者、ミッチ・フランクは「ワインのメリットを無視している」として、このマーシーの主張に反発。政府機関(全米科学・工学・医学アカデミー、NASEM)による調査では「適度な飲酒をしている人は、まったく飲酒しない人より長生きする傾向があることが示されている」ことを指摘している。
そして、マーシーは「大まかで、単純化しすぎた主張によって、すべてのアルコールを危険なものにしようとする動きに加担している」と述べている。フランクによれば、米国では数年前から、健康への影響を理由にワインの「消費を抑えようとする」声が高まっている。
消費者を混乱させる専門家たち
フランクによると、発がん性に関する警告の表示を義務化することへの米議会の関心は「高くない」さらに、マーシーはすでに退任し、公的な役割を担う立場から、自身の見解を主張することができない。つまり、この問題は今のところ、政治的な対応が難しい。だが、それでもこの問題が取り上げられるのは、マーシーの狙いが法改正ではなく、世論を変えることにあるからだとフランクは語る。
こうした動きは、ワインが健康に及ぼす影響について明確に理解していない可能性がある消費者たちを、混乱に陥らせる可能性がある。情報サイクルの犠牲者となる消費者は「何を信じればいいかわからない」状態に取り残されることになり得る。
初期の、あるいは疑問が残る研究に裏づけられた(かつての)禁酒法のようなレトリックは、フランクには「ワインを『次なるタバコ』に位置づけようとしているように思える」という。
一方、経験豊富なワインライターのデイブ・マッキンタイアもまた、そうした「反アルコール」の運動は、消費者に「責任ある飲酒」ではなく「断酒」を促すものだと述べている。