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2025.03.26 10:15

メルセデス・ベンツ日本・新社長が語る 攻めて切り開く、未来のラグジュアリー

メルセデス・ベンツ日本の新社長、ゲルティンガー剛が描く未来とは。クルマは単なる移動手段ではなく、心を動かす体験を提供するというビジョンを日本市場でどのように深化させるのか。


「ラグジュアリーとは何か?」

この問いに対し、2024年9月にメルセデス・ベンツ日本の社長 兼 CEOに就任したゲルティンガー剛は明確に答える。

「機能性やデザイン性の高さはもちろんですが、最も重要なのは、“心を動かす体験”です」

メルセデス・ベンツが日本市場で果たす役割は、単なる輸入車メーカーの立場にとどまらない。ラグジュアリーとは、高級品を所有することではなく、その背景にある哲学や思想まで含めた価値の集合体であり、日本の消費者はこの「ストーリー性」に対して極めて敏感だ。

メルセデス・ベンツ日本は10年連続で国内純輸入車販売台数No.1という実績を上げている。この数字を維持しながら、どのようにブランドの価値を深化させていくのか。ゲルティンガーの視点は、単なる経営戦略を超え、日本のラグジュアリー市場の未来に対する示唆にもなる。

ゲルティンガーはドイツ本社でマーケティング&セールスの取締役秘書室長を務めた後、グローバルでのアフターセールスビジネスの強化に貢献するなど、世界各国のマーケットを知る。その経験を踏まえ、彼は日本市場の特異性について語る。

「日本のお客様は、世界のどの市場とも異なる感性をもっています。エンジニアリングの細部にこだわり、ブランドの哲学を深く知ろうとする姿勢は、他国ではなかなか見られません」

日本は「モノづくりの国」であり、品質やクラフトマンシップへの審美眼が高いのだという。そのため、単に高品質なクルマを提供するだけでは、日本の顧客の期待に応えられない。メルセデス・ベンツが誇る高い技術力は前提条件であり、その先にある「ブランドとしての哲学」をどのように伝えるかが問われている。

「私が就任してからの半年間、多くの時間を全国の販売店を訪ねることに費やしました。現場のスタッフと対話し、お客様が求めているものを理解するためです」

彼にとって重要なのは、単に数字を追うだけではなく、ブランドとしての現在地を把握し、今後の戦略を明確にすることだった。

そのなかでキーとなるEV戦略においても、単なる電動化ではなく、ブランド価値を維持しながらの進化を目指すという。

「私たちはカーボンニュートラルを達成するために電動化を推進していますが、日本市場には特有のニーズがあります。充電インフラの整備状況やお客様のライフスタイルに応じ、お客様のニーズを最優先におきながらEVだけでなくガソリン車やPHEVも提供し続けています」

メルセデス・ベンツの強みは、イノベーションを単なる機能向上ではなく、「ラグジュアリー体験」として提供できることにある。例えば、マイバッハやAMGといったハイエンドモデルでは、電動化が単なる環境対応ではなく、快適性やパフォーマンスの向上と結びついている。

求められるのは、EVであるかどうかではなく、メルセデス・ベンツを所有する意味である。

次ページ > ラグジュアリーは、それを取り巻く文化や体験があってこそ成立する

photograph by Teppei Hoshida | text by Tsuzumi Aoyama

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