人間にとって、遺伝的に最も近い親戚はチンパンジーだ。ヒトとチンパンジーの遺伝的構成は、約99%が一致する。これは、私たちが共通祖先を持つためだ。ヒトとチンパンジーが袂を分かったのは約600万年前で、進化生物学的に見ればそれほど遠い昔ではない。
このように共通のルーツを持っている一方で、ヒトとチンパンジー、あるいはその他の大型類人猿の食性には、どれくらい違いがあるのだろうか?
実は、あなたが思うよりも、違いは大きいかもしれない。大型類人猿では、植物質が年間食料の87%から、種によっては99%以上を占めることが、学術誌『Journal of Nutrition』に掲載された論文から明らかになっている。対照的に、現代の米国人の食生活では、平均してタンパク質の約70%を動物質から得ている。
科学者たちは、ヒトが近縁の霊長類とは異なる進化の道のりをたどった主な理由の一つが、食性にあったのではないかと推測している。以下は、カリフォルニア大学バークレー校の人類学者、キャサリン・ミルトンによる説明だ。
「ヒトの系統は、動物質の食料を、たまに摂取する補完的要素ではなく、日常的に利用するようになったことで、栄養面での制約を回避することができた可能性がある(その制約とは、類人猿において、体サイズが増加することに関して課せられたものだ)。動物質の食料を頻繁に摂取しないかぎり、ヒトが並外れて大きく複雑な脳を獲得しつつ、大型で活発で社会性の強い霊長類としての進化の軌道を進み続けることは、ほぼあり得なかった」
「ヒトの進化が進むにつれて、特に幼い子どもたちは、脳が急速に成長し、大人と比べて高い代謝率、栄養面での要求が多いことから、肉のような、重量に対して栄養が凝縮された『質の高い食料』から恩恵を得たと考えられる」
現在の大型類人猿が、ごくわずかな肉しか口にしない一方で、初期人類がどれだけ多くの肉を摂取していたかという推定値は、驚きに値するものだ。